ご主人 家づくりを考えたきっかけは、子どもが増えてそれまで住んでいた集合住宅が手狭になったことと、勤務先の家賃補助の変更です。将来的に売却する前提ならマンション購入という方法もありましたが、30年40年経っても子どもに残せる家を望んでいたので、それなら一戸建てだと考えました。
ご主人 家をつくる大前提として「地震に強い」という条件があり、耐震性能について調べていたら「SE構法(※)」という大空間と高耐震を両立する木造建築技術にたどり着きました。その登録施工店の中でも「重量木骨プレミアムパートナー」に名があったことから阿部建設を知ったのです。施工事例を見てみたら、大好きな建築家・伊礼智さんとコラボレートしていてそのテイストの家も手がけていたのでさらに興味を持ちました。
最終的には、家庭用エアコン1台の稼働(夏用・冬用各1台、計2台のエアコン設置)で夏も冬もダクトレスで全館空調を実現できることが、選んだ決め手になりました。というのも、家庭用エアコン1台で冷房計画をできる会社はあまりありません。一般的には専用の大型空調システムを導入して全館空調を計画しますが、導入費用やランニングコストが高額になりがちです。空気は目に見えないからこそきちんと設計しないと空調はうまく機能しません。阿部建設は性能とデザインを高いところで実現していると感じました。
ご主人 家づくりで目指したのは、そこで過ごすことに家族みんなが幸せを感じられる住まいです。休日にはゆったり流れる時間を楽しむスローライフを実現できるような。例えば広いLDKで団欒したり、夏にはBBQやプール遊びをしたり。それにキャンプが好きで、冬にはテントの中に薪ストーブを入れて楽しんでいることもあり、家をつくるなら薪ストーブは必須でした。
奥様 私は子どもがのびのびと過ごせる家を希望していました。光を呼び込む吹き抜けや、料理をしている時も子どもがどこにいるのかが分かるキッチンがいいなと思っていたんです。キッチンを中央にレイアウトしつつ、生活感が出過ぎないように冷蔵庫などはリビングから見えないようにしてもらいました。
奥様 ちょっと作業できるデスクスペースもほしいと思っていて、どこにしようかと考えた結果、パントリーの中に設けることにしました。パントリーには家電や食品のストックを置きますが、広いスペースは必要なかったので。この選択が大成功で、今大いに活躍しています。
ご主人 絶対に取り入れたかったものには塗り壁もあります。外壁にはそとん壁、室内には漆喰を希望しました。どちらもつなぎ目がなく、独特な光の当たり方が魅力だからです。そとん壁はコテの当て方によって表情が変わる唯一無二の外観となり、漆喰もコテ仕上げでないと表現できない独特のツヤ感があります。
このほか、木製サッシも当初から必ず取り入れる予定でした。家の中には樹脂サッシを使っている場所もありますが、リビングでは景色を楽しむため、その“景色を切り取る”のは木がいいと思ったのです。階段の素材もアイアンと木で迷いましたが、木視率を上げる方が全体のまとまりが出ると考え、木を選んでいます。
奥様 キッチンにも木の面材を使いましたよね。
ご主人 そうですね。造作キッチンにしたかったのですが、予算との兼ね合いからキッチン扉外側に木の面材を貼ってもらいました。コストを抑えつつ、見た目と満足度が格段にアップしました。
ご主人 こうした予算との兼ね合いで、要望の中から何を取捨選択して減額するかが家づくりの課題でした。車の乗り降りをする際に、雨の日も濡れないようにしたかったのですが、カーポートの設置は気が進まず、かといってビルトインガレージにすると高額になってしまいます。そこで「SE構法」の強みを活かし、柱を立てずに軒を延ばしました。玄関先まで1.5メートルほどある深い軒を実現しつつ、予算内に抑えることができたんです。
ご主人 また、阿部建設からの提案の中でも、窓の取り方がプロだなと感じました。阿部建設の担当者が、見晴らしを考慮して抜けの良い方向に窓をつくる設計にしてくれたのです。例えば、ダイニングテーブル横の大きな窓。これがなければ成り立たちませんでした。開口部は心地良さに直結すると思うので、ポイントを抑えた提案をしてくれたことが印象的でした。
ご主人 家が完成してからは、仕事から帰ってくるとダイニングテーブルの心地良いイスでくつろいだり、ソファに座ったり、薪ストーブ前でそろそろ火を入れようかと思いながら腰掛けたり、階段の一段目に座って照明に照らされた夜の庭を眺めたり…。時間帯ごとに座る場所を変えてゆったりと過ごしています。
昼間は、時間とともに光の入り方が変化するのを感じながら、漆喰の表情やスケルトン階段の陰影を眺めるのが好きですね。
ご主人 薪ストーブを取り入れるのに当たり、床は洗い出し仕上げの土間にしました。キャンプで薪ストーブを使った経験から、床は灰などで汚れがちと知っていたので、少しのスペースでなく一定の広さを確保した土間リビングにしたのです。土間にしたことで蓄熱性が高くなり、冬の夜に2時間ほど焚いた翌朝、灰を掘り起こせば熾火がまだ残っています。夏は少しひんやりして心地良いですし。広さを確保したから、窮屈さを感じずゆったり使えるのもいいですね。
奥様 私のお気に入りはキッチンで、特に吊戸棚が便利でいいなと思っています。最初のプランでは飾り棚でしたが、オープンになっているとほこりが溜まりやすそうだしディスプレイに気を遣うので、隠す収納に変えてもらいました。
ご主人 吊戸棚の大きさは結構悩みましたね。小さ過ぎると使いづらいし、大き過ぎると周りに支障がありますから。あらかじめ何を置くかを考えて、毎朝使うカップ&ソーサーや子どものコップ、コーヒー豆などここにあると使い勝手の良いアイテムに合わせたサイズでつくってもらいました。
奥様 造作だからこその使いやすさや、これだけでオシャレに見えるのが魅力です。ほかに、パントリーの中のデスクスペースは“おこもり感”が気に入っています。一人でほっとひと息ついたり、裁縫したり、子どもの連絡帳など書き物をしたりと使い勝手が抜群です。
ご主人 パントリーからなかなか出てこない時もありますよね(笑)。
新居ができて変化したこととしては、キャンプに行く頻度が減りました。以前は月に2回ぐらいだったのが、今は2ヵ月に1回ほど。庭で焚き火もでき、自宅で十分楽しめるようになったからです。非日常が日常になり、日常的に火を眺めながらくつろげる贅沢さを感じています。
奥様 私は家事がすごくしやすくなったのがうれしいですね。洗濯物を干して乾いたら、ハンガーにかけたまま隣のクローゼットに収納できます。食洗機や浴槽の自動洗浄も取り入れたので、家事の時短が叶いました。
ご主人 それにめちゃくちゃ暖かくて涼しい家です。性能の良さは数値で分かっていたものの、実際に住むことで実感しました。そして素材も毎日ふれるからこそ良さを体感でき、良い家に住んでいるなと感じることができます。
ご主人 これからここで暮らしていくにつれ経年変化していく様子も楽しみです。床の色や素材の風合いが歳月とともに味わいを深めていく…その変化を良さと捉え、家も家族も深みを増していきたいですね。
そしてこの家を子どもたちも大好きになってくれることを願っています。成長して巣立っていった後も“帰りたくなる家”であり、「自分の故郷はここ」と感じられる場であってほしい。そう思っています。
奥様 まずは近い将来、子どもと一緒に料理をしたいですね。キッチンが以前の住宅より広くなり、子どもが最近お手伝いをしてくれるようになったので、親子で料理を楽しめればと思います。
ご主人 家づくりを改めて振り返ってみて、これから始めようとしている方には“トータルコスト”を意識してみてほしいと思います。初期費用に目を向けがちですが、住み始めてからかかるコストも含めて検討してはいかがでしょう。そう考えると、耐震性や断熱性・気密性などの性能はかなり重要です。高い確率で想定されている巨大地震が起きた場合、もし住まいの耐震性が低ければ、倒壊を免れたとしても補修に膨大な費用がかかります。もし断熱性や気密性が低ければ、多くの冷暖房費が必要になります。長く住む家だからこそ長期的な視点が大切ではないでしょうか。
※K様邸の全館空調: 家全体を夏は2階ホールに設置したエアコン、冬は床下エアコンで温度管理(なお、冬は薪ストーブで家中暖かくなるためエアコンをほとんど稼働させていないそうです)。容量の大きい全館空調ではなく、 “空気の流れ”を設計することでエアコンによる空調を実現しています。このため、夏は1階と2階の“階間”も冷気が移動し、1階の隅々まで冷気が行き渡ります。稼働するのはルームエアコン1台だけなので電気代も大幅に抑えられます。
※SE構法: 自由な空間デザインと高い耐震性能を両立する木造建築技術。強い構造躯体と厳密な構造計算で、「安心できる家づくり」と「理想の暮らし」の両立を実現します。