皆さんはどんな「デザイン」が好きですか?
家づくりのなかでも重要な要素の「デザイン」。お客さまの好みがどんなものか、打ち合わせの中で少しずつ探っていきますが、やはりそこは十人十色だなと感じています。
最近はインスタグラムやピンタレスト、ルームクリップなど、SNSやネット検索でおしゃれなデザインの家を簡単に探すことができ、具体的なイメージが共有しやすくなりました。その反面、たくさんの情報を集められることで「キッチンはこうしたい」「リビングはこんな感じ」と言ったように、デザインが一貫していなかったり、ご家族の中でイメージが違ったりと、考えをまとめることが難しくなったという一面もあります。しかし、理想のイメージが多くあるということは選択肢もたくさんあるということ。それらをまとめて全体をコーディネートしていくところにも、私たちの設計力が試されていると思っています。
今回はそんな「デザイン」の視点から、昨年6月にお引き渡しを終えたTさまについてお話ししたいと思います。
(少し長くなってしまったので、ブログを2本立てにしてご紹介します)
Tさまは、2017年に初めてモデルハウスにご来場いただき、土地探しのご相談からスタートしました。事前に土地に関するヒアリングを行い、お客さま自身での土地探しと並行して、弊社の「土地探しサポート」も活用していただくことになりました。数か月間集中してお互いに物件を出し合いながら進めましたが、(その間、ご実家の土地の売却相談やイベントへもご参加いただきました)なかなかピンとくる土地が見つかりませんでした。
探し始めてからおよそ1年後、当初探していたエリアとは違う別のエリアで、立地・形状共に納得できる土地に出会うことができました。(別のエリアでも希望が叶う土地に出会うことができるのですね!)しかし、実はその土地、購入前の現地確認で南面と東面に建物が近接して建つことが分かっていました。Tさまも日当たりについては心配されていましたが、土地購入前に「日照シミュレーション」を行い、他の場所で採光が取れることを確認した上でご購入に至ったという経緯があります。近隣の環境を事前に調査しシミュレーションできたので、購入〜設計打ち合わせまで安心して進めることができました。
さて、土地も決まり本格的な家づくりへ。Tさまの当初からのご要望は「シンプルでありながらカッコ良い家」というもの。「シンプル」という言葉は単純明快なように聞こえますが、とても奥が深く難しいものだと感じています。単純に「シンプル=簡素なもの」と捉えてしまうと、一歩間違えば広がりのない一辺倒な計画、もっと言えば、“つまらない空間”になってしまいます。また、何をもって「シンプル」と感じるのか、そのイメージは人によってさまざま。白が基調であればシンプル、物が少なければシンプル‥・、ここもやはり千差万別なのです。
では、Tさまの求めている「シンプルでカッコ良い家」とは何か?
そのヒントは、Tさまが元々住んでいた賃貸のお住まいとTさまが考える「理想のくらし」にありました。
初めてTさまのご自宅にお伺いした際、古材を生かした家具やレトロな照明などが上手にコーディネートされていて、まるでオシャレなカフェに来たような雰囲気の良さを感じました。一方で、Tさまからは「カフェ風は好きだけれど飽きが来そうなので、シンプルにしたい」というご要望も。また、それぞれの空間の用途を限定するのではなく「いろいろな場所で、好きに過ごせる」自由度の高い間取りを理想とされていました。このやり取りが「シンプルなデザイン」のスタートだったと思います。
私自身が家づくりにおいて意識していることは、どんな家を設計する場合でも「シンプル」であること。流行り廃りがなく、長く愛される家をつくるために常に心掛けていることです。例えば、素材を絞り、見える線(ライン)を少なくすること。ただしそれだけでは“ただのつまらない箱”になってしまうので、そこに高さ方向も含めた3次元で動きを付ける。これにより空間に広がりを持たせるができると考えます。
Tさまのイメージもこれに合うのでは・・・と思いご提案したのは、ワンフロアの空間に勾配天井やダウンフロアでリズムを付けて広がりを出しつつ、シンプルが故の美しさも感じる「余白のある住まい」です。造り込み過ぎず「余白」を残すことで空間に自由度が生まれ、一方で、インテリアや小物などによってTさまのセンスの良さが光るものとなります。
この「余白」をつくるために必要なことは、やはり空間に出てくるラインを減らし、素材を絞ること。その際に注意しなければいけないのは、それらの要素はいい意味でも悪い意味でも目立ってくるということです。手すりのラインは極力細く、壁などのラインは水平・垂直を意識することで、繊細さが生まれすっきりとした印象に。また、全体のベースカラーを白に統一し素材を厳選することで、その部分が強調され「アクセント」として生きてきます。
では、実際にはどんな空間に仕上がったのでしょうか。次回のブログでは、空間ごとにご紹介していきます。
なお、こちらのお住まいは 施工事例「余白を愉しむ家」 に掲載しています。
業務企画室 室長 阿部