私の設計ポイント <窓> 後編2023.01.25

前編に引き続き、「なぜ窓のデザインは慎重に決めていかなければいけないのか?」3つの理由の残り2つをお話しします。

 
2.見える景色と見られ方


日本に古くからある『借景』という言葉。その名の通り景色を少しだけ借りることで、部屋の中からでも四季の移ろいを感じたり、外と繋がるような開放感をつくり出したりと、住まいに彩りと豊かさを生む効果的な手法です。特にリビングやダイニングなど、腰を掛け視線が下がる「居場所」となる空間には、そこから見える景色を考えながら窓を設けます。
その窓は大きかったり小さかったりとシチュエーションによってもさまざまですが、「居場所」に窓を設けるということは、“外の景色が見える”と同時に“外からも家の中が見えてしまう”ということです。つまり、見られることも意識してデザインしなければいけないため、プライバシー面などにも配慮が必要です。
 

 
窓を設けたいけれど、外からの視線も気になる…。
隣家に囲まれていたり大きな通りに面しているなど、周辺環境によって難しいケースは多々あります。そんなときに「見られない窓」を設けるのも一つの手法です。窓の高さを低く抑える、高い/低い場所に窓を設ける(高窓/地窓)、中庭の形状にする、目隠し壁を設ける、障子やブラインドで視線を遮る…などいろいろな組み合わせがあります。
 

 
「窓の外に植栽1本」でも借景として特別な景色が生まれます。見られてしまうことばかりを考えすぎてせっかくの景色を塞いだり、外との繋がりをなくしてしまうのはとても勿体ないことです。極端になりすぎないように注意が必要です。
 

 
一方で、映る景色をより美しく見せるポイントがあります。それは窓まわりの「余白」をしっかりと残すこと。こうすることでピクチャーウインドーのように、絵画のような景色がつくられとても綺麗です。特に阿部建設の家は漆喰仕上げが多いため、より無駄がないシンプルな情景をつくりだします。
 

 
窓の形状はかなり多く取り上げるのが難しいですが、景色を見たい窓にはFIX窓や1本引き込み窓のようなサッシ枠が少ないものをお勧めします。木製のサッシでかわいらしく演出するのもいいですね。
このあたりもご要望をお伺いしながらご提案しますので、お任せいただいて大丈夫です!
 

 
3.温熱環境に直結


窓の断熱性能はここ数年で大きく向上し、住宅自体の断熱性能(外皮性能Ua値)は高い水準になりつつあります。しかし、いくら断熱性能が高くなっても窓がない部分(壁)の断熱性能に比べるとまだまだ低く、熱損失の弱点となります。つまり、無駄な窓を設けるとその分家の断熱性能の低下に直結してしまうということです。また方位によっては、風抜きで良かれと思った西側の窓が西日の入り口となってしまい、夏暑いという話もよく耳にします。しかしこれはあくまで一般的な話で、敷地の形状や周辺環境、建物の状況などよっては西側に開口部を大きくとるというプランをご提案することもあります。
 
実際に、「斜めに開く庭の家」は、より開けた西側に対して開口部を大きく設けた実例になります。西日対策として、深い軒を出したり、西日を遮る木製のガラリ戸を設けたりと極端に不利にならないように設計しています。
 

 

 
前編・後編を通してお話しした3つのポイントは、無数ある考え方のうちの1つです。正解があるわけではないので、こんな考えもあるんだなと、少しでも家づくりの参考にしていただけたら嬉しいです。

 
上記でもお話しした通り、阿部建設では1棟1棟、敷地や周辺環境に合わせて間取りを考えていくのと同じように、窓についてもさまざまな視点から熟考したうえでプランをご提案いたします。提案内容も最初の提案でベストなものができるわけではなく、お客さまと何度も打合せを重ねていく中でブラッシュアップさせながら、お客さまらしい家になっていきます。
まずは「こんな家が好きなんだよね。」という感じでBriefingという相談会にご参加いただき、その後の無料設計の中で沢山ご意見をいただければと思います。

 
 

設計 香取

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