設計の「癖」?2024.05.15

みなさん、家づくりの設計はどんなふうに進んでいくと思いますか?
自分たちが伝えた要望やイメージが図面に落とし込まれ、平面から立体になっていく…。そんな流れが想像できると思います。
 
私自身の設計も大まかには同じですが、人によってやり方や流れは若干変わります。そしてそれと呼応するかたちで、設計の「癖」があることも知っておかなければいけません。
実はこの「癖」というのがとてもやっかい。
お客様のご要望を満たした設計であっても、その裏には担当者の経験に基づく考えや得意な設計手法、嗜好が多少なりとも出てきます。
 

 
建築家においてはそれが大きな価値を持ちます。自分の価値観と合った設計やデザインができあがる大前提となるからです。しかし、一担当者、一建築会社において自分たちの価値観と完全に合致する担当者と出合えるケースはそう多くはないと思います。(スタッフ一人ひとりがどんな設計をしているのか、事前に把握することはなかなか難しいですよね。)
私たちの家づくりは、標準プランもない一からつくる「フルオーダー」。お客様のご要望をとことん追求し「癖」に左右されない設計であることが大切です。それを実現するために取り入れているのが「カンファレンス」です。
 

 
カンファレンスとは?


カンファレンスとは、一つの建築プロジェクトに対して複数の設計スタッフが集まり、それぞれが独自のアイデアや視点からプランを考え意見交換をすることです。一組のお客様に対して多様な視点を交えることで最良のプランを導き出し、お客様のご要望や意図を正確に反映することを目的としています。
 
カンファレンスという言葉の語源は、もともと医師が行う“カンファレンス”から来ています。医師のカンファレンスでは、症例や治療法について専門家が集まり、意見交換し、最適な治療法を決定するというものです。
 

 
カンファレンスの流れ


①案件の共有
最初にメインの担当者からお客様の情報が共有されます。土地の条件、予算、ご要望、好みのデザインなどプランに必要な情報を整理する、プラン前の下準備を行います。
 
②プラン出し
カンファレンスに参加した全設計スタッフが、それぞれ独自のアイデアを元にプランを出し合います。間取り、外観デザイン、使われる素材などあらゆる面から提案が行われますが、お客様のイメージに合わせた家具やペンダント照明など、かなり具体的な内容が出ることも…。個々のスタッフの思いや考え方がよくわかる瞬間でもあります。
 

 
③ディスカッションとフィードバック
出された各プランについて、メンバー全員でディスカッション。良い点や改善すべき点、ブラッシュアップの方向性などを話し合います。ここでポイントなのが、若手からベテランまで老若男女問わず「フラットな関係」で意見交換を行なっているということ。
 

あるカンファレンスでは、若手スタッフのアイデアをヒントにとても良いプランができたり、女性ならではの視点に目から鱗が落ちたりなど、一人ではないからこそ「!!」の瞬間が出てきます。さらに、構造や敷地の使い方、パッシブ設計、空調や換気計画など、私たちが大切にしている「基本性能」の大まかな考え方まで共有しながら、バランスの取れたベストなプランを探っていきます。
 
④最終案の決定
ディスカッションの後はそれぞれのアイデアを元に、最終的なプランへまとめ上げる作業を行います。1つのプランがそのまま選ばれるのではなく、それぞれの長所を合わせた新たなプランをつくります。もちろん誰かのプランがベースになることもあれば、全員のプランの合作になることも。それも全ては「お客様のご要望に最も適しているか?」という基準に沿って決定されます。
 

 
カンファレンスのメリット


カンファレンスには手間と時間がかかります。しかし、なぜこのような設計手法を取っているのか?それはやはりメリットの方がはるかに大きいからです。
 
①多様な視点で考えられる
複数の設計スタッフが参加することで、多様なアイデアや視点が共有され、よりクリエイティブで斬新なプランが生まれます。お客様と直接お会いしていないからこそ、第三者的な視点で担当者では思いつかないプランが出てくることも多々あります。
 
②品質向上
複数の意見が出ることで設計の「質」が向上します。例えば、若手では気が付きにくい、施工が難しく費用のかかるデザインや構造の組み方は、ベテランだからこそ気づく観点です。初期のプラン出しの段階で間違いや見落としを防ぐことができれば、契約後の打合せでお客様との齟齬や、予期せぬ費用の発生が少なくなり、完成度の高いプランができあがります。
 
③お客様満足度の向上
お客様のご要望や好みを反映しつつ、多角的視点から考え抜かれた最良のプラン。「言葉に発したご要望そのまま」ではなく、お客様のイメージの一歩先、将来のことを踏まえたプロならではの提案は、お客様からにもご満足いただけている!と自負しています。
 

 
④ スタッフのスキルアップ
スタッフの設計力向上にも大きく役立っています。それは若手スタッフだけではありません。参加者全員、ベテランのスタッフ含めてスキルアップに繋がっています。私自身100棟以上の設計を行ってきたため、ある程度の経験値があると思いますが、 カンファレンスに参加すると毎回必ず一つ学びを得られます。お客様のご要望に対する解釈の仕方や、家族構成・生活スタイルに対する考え方、ご要望を叶えつつ予算内に収めるコスパの高い設計方法など…。数えきれないほど学びを受けています。
 
今設計に携わっているスタッフは、サポートスタッフ(設計補佐)含めて17名。それぞれ数人ほどのチームを組んで、お客様の家づくりに向き合っています。一人ひとりが持っている個性を発揮でき、アイデアを活かすにはどうしたらいいか?その答えがこのカンファレンスでした。
 

一つの敷地に対し建物を設計すると、人によって全く違うプランができあがります。敷地の使い方も外観も、お客様のご要望の叶え方もさまざま。同じプランは絶対に出てきません。担当者の「癖」もそこには反映されるでしょう。カンファレンスをしているとそれがよくわかります。
 

 
一人の担当者だけで設計を行なっていると、その人の考えだけで家づくりが進むことになります。世間では「家づくりは設計士や担当者によって出来が変わる」と言わることも…。もちろんそのプロセスに問題があるわけではないですし、世の中の一般的な住宅設計の進め方のひとつではあります。
 
その中で私たちは、一人で設計をするよりも複数人で設計を進めることに大きなメリットを見出しました。もちろん詳細設計を進めていく上ではメインの担当者が責任もってお客様と一緒に考えていきます。
敷地の使い方や大まかな建物のフォルム、部屋の配置など、柔軟な発想が求められる初期段階においては複数の設計士が関わった方がより良いご提案に繋がると身をもって感じています。そして、何よりも全物件「良い家を建てさせていただいている」と自信を持って言えます。
 
カンファレンスを活用しながら、全員がプロとして良い提案が行えるよう努めています。ご興味がある方はぜひ完成見学会や家づくりのご相談にお越しください。
 
 

業務企画室 室長 阿部

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