こんにちは、設計の三宅です。
8/4に岐阜県各務原市にて完成見学会が開催されました。
車いす生活をされているお施主様が快適に暮らせるように設計された「バリアフリー住宅」です。
さて、一口に「バリアフリー」といっても障がいの部位や程度は人によってさまざまです。そのため、建物に求められる機能もお施主様によって変わってきます。そんなバリアフリー住宅の設計ポイントを、今回のお住まいを例に挙げてご紹介します!
行き止まりのないプラン
バリアフリー住宅を設計する場合に重要なポイント、それは「動線」です。部屋同士がつながり、行き止まりをつくらないようにプランにします。
こちらのお住まいは、LDK→水まわり→パントリーと、回遊できるスムーズな動線にしました。家族間で通路を譲りあうことがなくなり、車いすはもちろん、家事楽につながる時短動線になりました。
また、動線にそって設けた収納もポイントの一つです。車いすが行けない部屋や収納をつくらないことで、ご家族に気を遣わせることなく生活できる設計になっています。
車いす専用の空間
水まわりスペースや玄関など、「車いす専用」の空間がご家族の暮らしをグッと快適にしてくれます。
例えば、通常平屋の場合、トイレを1箇所だけ設けることが多いのですが、こちらのお住まいには2箇所設けています。“車いす専用”として設けたトイレは、移乗に必要なスペースに加え、洗面と収納を使い勝手に合わせて造作しています。
個室内に必要な機能をすべて入れることでご家族の手を借りることもなくなり、トイレも別にあるため、時間を気にせず使うことができます。
トイレの洗面台の下はオープンになっていて、車いすが入り込める高さに設定しています。便器や背もたれは、実際に現場で仮設置し使いやすい位置になるよう調整しました。
お施主様のための、まさにフルオーダーの空間です。
外とつながる空間
車いすでの生活は、体調のゆらぎなどで家の中で過ごす時間が多くなることも。人によっては、一人で自由に外出することが難しいケースもあります。そのため、障がい者にとって外とのつながりは健常者以上に重要です。
こちらのお住まいでは、ご家族でBBQも楽しめるよう11畳の広々としたデッキテラスを設けました。LDKとのつながりもあり、気軽に外の風にあたったり日光浴などもできる心地よい居場所です。
デッキとフェンスにはセランガンバツというハードウッドを使用しています。天然木ですが約20年もつ耐久性があり、定期的に塗料を塗る必要がないお手入れが楽な材料を選びました。
大森ウッドタウンのrenoBASEにも使われています。気になった方はぜひご来場ください!
最後に「注文住宅ならでは!」このお住まいのこだわりポイントも少しご紹介します。
眠っていた天板を活用
住まいの随所に設けられた造作家具の天板は、お施主様から支給いただいたものです。お施主様のおじい様が原板を買い使わずじまいで倉庫にしまい込んでいたものを、この新築のタイミングで製材し天板として活用しました!
その一つがこちらの主寝室のベッド脇のデスクです。濃い色のケヤキの天板に、薄い色のシナの側板を組み合わせた可愛らしいデスクです。
注文住宅ならではの、ご家族の思い出に残る設えです。
将来を見据えたオープンスペース
LDKに隣接してオープンスペースを設けました。将来的には2室の子ども部屋をつくれるよう、10畳分の広さを確保しています。後々の工事は必要になりますが、LDKに隣り合う場所に設けることで、お子様が小さいうちはリビングの一部としてのびのび使うことができます。
バリアフリーの家って?
バリアフリー住宅と聞くと、皆さんはどんなイメージをもたれますか?
どこか病院のような簡素な空間だったり、どちらかというとおしゃれとは少し違う、機能的な空間をイメージされる方も多いと思います。今回ご紹介したお住まいは、皆さんがイメージする”バリアフリーらしさ”を感じたでしょうか?
敷地環境や家族構成、ライフスタイルはご家族によってさまざまです。もちろんご要望やイメージもそれぞれ異なります。「バリアフリー」であるということは、それらと同列の条件でありご要望のひとつだと考えています。
バリアフリーという要素は、意匠性が失われる要因にはなりません。
どんな条件のお住まいでも、阿部建設は一棟一棟フルオーダーで、お施主様のこだわりが詰まった家づくりをしていきます。
こちらのお施主様の家づくりのストーリーについては、改めてご紹介できればと思っています。
設計 三宅