建築物省エネ法が改正されました2021.04.09

昨今、温室効果ガス排出量の削減目標達成に向けた「住宅・建築物の省エネルギー対策」の強化が課題となっています。このため、住宅・建築物市場を取り巻く環境を踏まえ、それぞれの規模や用途ごとの特性に応じた実効性の高い総合的な対策を講じることを目的として、【改正建築物省エネ法】が令和3年4月1日に全面施行されました。オフィスビル、マンション、戸建て住宅などそれぞれの用途に応じた措置が制定されています。家づくりをお考えの方にはぜひ知っておいて損はない制度ですので、今回は戸建住宅を中心に改正のポイントをご紹介します。

 

ポイント1:省エネ性能に関する説明の義務化(令和3年4月1日より施行)


これまでは、300㎡以上の建物については行政への届出が必要となっており、300㎡未満の建物については特に指定はありませんでしたが、今回の改正によって300㎡未満の建物に【説明義務】という制度が創設されました。以下は国土交通省に記載されている制度説明文です。
 
【説明義務制度】(新たに創設)

  • 300㎡未満の小規模住宅・建築物の設計に際して、建築士から建築主に対して、以下の内容について書面で説明を行うことが義務づけられます。

1.  省エネ基準への適否

2.(省エネ基準に適合しない場合)省エネ性能確保のための措置

     

  • 300㎡未満の共同住宅や小規模店舗等も対象となります。
  • 建築主に交付する説明書面は、建築士事務所の保存図書に追加されます。

 
簡潔にまとめると「計画している建物が省エネ基準に適合するかしないかをお施主さまに必ず説明し、かつ、署名を頂いた上で説明書面を保管する」という内容が義務付けられました。
 

 

省エネ基準とは?


では、その省エネ基準とはどういったものでしょうか?省エネ基準として評価をされるのは以下の2つになります。

 

① 外皮性能

一つ目は「外皮性能」、簡単に言えば「断熱性能」です。外壁、窓、基礎などそれぞれの箇所について材料ごとの熱貫流率を計算し、住宅全体のUA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(冷房期の日射熱取得率)を算出します。これらの値が地域ごとに定められている省エネ基準値を下回れば、省エネ基準に適合していると言えます。
 

 
愛知県は主に地域区分6または5に区分されています。

□ 6地域の基準値・・UA値:0.87以下/ηAC値:2.8以下

□ 5地域の基準値・・UA値:0.87以下/ηAC値:3.0以下
 

 
② 一次エネルギー消費量

二つ目は「一次エネルギー消費量」です。簡単に言えば住宅の「燃費性能」です。主に住宅で使用されるエネルギーの暖房、冷房、換気、給湯、照明など、実際に採用する設備の性能から、エネルギー消費量を算出します。さらに一つ目の基準であった外皮性能と合わせて計算し、一次エネルギー消費量を算出します。この数値が基準値よりも低ければ適合となります。
※住宅の大きさや性能ごとに基準値が変化します。
 

 
上記①②の項目から住宅に求められるものは、住宅自体の「断熱性能」と「省エネ設備の導入」です。今回の制度において、この基準は「適合義務」ではないのでこの数値を上回っていて不適合であっても、特に問題はありません。しかしながらその場合、適合させるための方法と費用をお施主さまに説明する義務があります。その為、義務ではないとはいえ、今後は省エネ基準に適合した住宅が一般的になっていくのではないかと思っています。お施主さま目線で考えれば、安心して省エネな住宅を取得できる良い制度だと思います。
 

 
阿部建設の家は?


それでは、実際に阿部建設の家はどうでしょうか。阿部建設ではこの制度が施行される以前から独自の基準を持っています。
 

UA値:0.56以下
 
こちらは最低限の数値です。実際に建築している物件の平均は0.5程度になります。ご要望によっては0.4以下など超高断熱物件の施工実績もありますので、お客さまに応じたご対応が可能です。
ηAC値と一次エネルギー消費量については、物件ごとに多少のバラつきはありますが断熱性能と比例しますので、必ず省エネ基準より高い性能でご提案します。
 

阿部建設では一棟一棟の住まいをフルオーダーで提供しているので、建物形状はもちろん仕様も全て異なります。その為、モデルプランではなくお客さまのお住まい一棟一棟、断熱性能と一次エネルギー消費量を算出します。工務店だからこその“快適に住まうことができる住宅性能”をご提案しています。
 

 
 
ポイント2:住宅トップランナー制度の対象に大手住宅事業者を追加(令和元年11月16日施行)


これまで、大手住宅事業者は【トップランナー基準】と言う独自の基準を達成するよう制度が整備されていました。主に大手の建売業者に課せられていたものですが、今回の法改正により注文住宅や賃貸アパートを多く提供している事業者も対象となりました。以下は国土交通省に記載の内容です。

 

  • 注文戸建住宅

対象事業者      年間300戸以上供給する事業者

目標年度         令和6年度

外皮基準         全ての住戸が省エネ基準に適合

1次エネ基準    省エネ基準▲25%(当面は▲20%)

 

  • 賃貸アパート

対象事業者      年間1,000戸以上供給する事業者

目標年度         令和6年度

外皮基準         全ての住戸が省エネ基準に適合

1次エネ基準    省エネ基準▲10%

 

  • 建売戸建住宅

対象事業者      年間150戸以上供給する事業者

目標年度         令和2年度

外皮基準         全ての住戸が省エネ基準に適合

1次エネ基準    省エネ基準▲15%

 

以上のように地域でもかなり大きなビルダー、工務店、大手ハウスメーカーなどが対象の制度になりますので、我々工務店にとっては関係が無いように思えます。しかしながら、住宅を多く提供している会社は日本の住宅のスタンダードを形作っていると言っても過言ではなく、それらが今の日本の住宅の基準を作ってきました。今回の省エネ基準然り、耐震基準なども大きな会社が導入していく過程で、法改正に繋がっているという面もあります。その為、工務店としては今後この【トップランナー制度】が基準となっていくのだと考えることができます。
 

 
既に阿部建設ではクリアしている内容にはなりますが、お客さまに時代に沿った適切な住まいをご提案するため、勉強会や研修会に参加し実際の施工物件でも実績を作っています。社会全体が省エネ、さらにはゼロエネルギーやIoTに向かっている中で、これらの基準に甘んじることなく、会社一丸となってより快適な家づくりを目指していきます。
 
国土交通省のHP <建築物省エネ法が改正されました>

阿部建設が加入しているハウスジーメンのコラム <省エネ説明義務制度の準備は大丈夫ですか?>

 

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