住宅の耐震性能 <構造計算は必要?>2023.08.16

さて、前回に続き構造計算について。
なぜ構造計算は行われないのか、少し私見も入ってしまいますが以下のことが考えられます。
 

①コスト
構造計算を行う場合、一般的に20万円程度~かかることが多いです。
 
②時間
構造計算はその場でパッとできるわけではなく、早くても2週間程度時間を要します。言い換えれば「手間がかかる」ということです。
 
③構造計算への理解がない
偏見ではなく、「無垢の太い柱、太い梁で建てれば大丈夫!」と自信たっぷりにお答えする会社もあります。確かに昔は無垢材で大黒柱がしっかりしていれば丈夫な家というイメージがありましたが、構造の強度だけで言えば、輸入材や集成材の方がよっぽど強い、なんてこともあります。
 
④建築基準法に合致しているので、やる必要がない
「基準法内で計画しているのだからよっぽど大丈夫」、「国のお墨付きをもらっている」という感覚の会社も多いようです。
 
このように、やる必要がないと言ってしまえば、その理由はいくらでも出てきます。
 

 
しかし近年の地震では、多くの住宅で“予期せぬ被害”が発生し、私たちはその状況を目の当たりにしてきました。
実際に現地を訪れた2016年の熊本地震では、建物の全壊・半壊が41,129戸ありました。その中には、2000年以降の新耐震基準の住宅も含まれ、12棟が大破、7棟が倒壊してしまっています。
 

 
これは新耐震基準全体の6%にあたります。逆を言えば94%は大きな損傷をしなかったということ。つまり、建築基準法通り建てていれば、熊本地震のような未曾有の大震災でもほとんどの建物は倒壊しないことが明らかになったとも言えます。
 
では、建築基準法通りでいいのではないか?
構造計算を行なっていない建物も問題ないのでは?思われますが、そうではありません。
 

 
なぜなら、「倒壊しない=そのまま住み続けられる」ということではないからです。
こちらも以前のブログでご紹介しましたが、建築基準法の耐震基準は“人命を守る為に倒壊しないこと”だけを目的としています。そこに住み続けられる、資産として残り続けることは考えられていません。せっかく建てた住まいです。人命は守られたとしてもそのまま住むことができないというのは、誰も幸せになりません。
 

 
では、住み続けられる住宅を建てるためにはどうすればよいのでしょうか?
そこで重要なのが【構造計算】です。構造計算を行い、確実に地震に耐えられる建物にする必要があります。
次回は、構造計算の種類について解説したいと思います。

 
 

業務企画室 室長 阿部

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