こんにちは、専務取締役の阿部将也です。
2025年4月、住宅を建てるうえで非常に重要な「建築基準法」が大きく改正されたことをご存知でしょうか?
いくつかの改正ポイントがありますが、なかでも、これから住宅取得を考えている方が注目すべき『4号特例の廃止』をはじめとしたルール変更について、今回はできるだけわかりやすく、丁寧に解説していきます。
ぜひ家づくりの参考にしてください!
そもそも建築基準法って何?
家づくりを考え始めたばかりの方にとって、「建築基準法」という言葉はちょっと堅苦しく聞こえるかもしれませんが、家づくりにおいてとても大切な要素です。
簡単に言うと、建築基準法とは「安全で快適な建物をつくるためのルール」です。
例えば、
といったように、建築分野における最低限の決まりごとが細かく定められています。
建築基準法ができた背景
そもそも建築基準法はなぜ必要なのでしょうか?
もしもこの法律がなかったら…。
地震に弱い家が乱立し小さな地震でも命に関わる大災害となってしまったり、建物が過密に並ぶことで消防車や救急車が建物近くまで駆けつけられず、避難が遅れ被害が拡大したり。 まったく日の当たらない家ができてしまう、なんてことも起きるかもしれません。
つまり、建築基準法のおかげで、私たちは安心して暮らせる家や環境を手に入れられるのです。
そんな建築基準法は今から75年前、1950年の戦後復興が進むなかで制定された法律です。
戦後、全国各地が焼け野原となり多くの人が住む場所を失い住宅不足に。また、応急的に建てられた安全性の低い建物も社会問題となりました。このような状況を受けて、建物の安全性を確保するための全国統一の基準が求められるようになり建築基準法が制定されました。
その後も、生活スタイルや都市のあり方、耐震偽装問題、大地震など、時代とともに変化する社会情勢や大災害などによって何度も改正が行われてきました。
特に有名なのが、1981年(昭和56年)の大改正です。1978年に起こった宮城県沖地震をきっかけに行われたこの改正によって新耐震基準が導入されました。それまでの旧耐震基準(1950年〜)は、“震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、補修することで生活ができる”という基準でした。今となっては考えられないですね…。
新耐震基準では、震度6強~7程度の地震でも倒壊しにくい建物づくりが義務付けられました。これ以降に建てられた建物は「新耐震基準建築物」と言われ、大きな地震でも被害を受けにくくなりました。
都市部と地方で基準が違う?
実は、建築基準法は“全国一律で同じ”ではありません。
気候や都市の状況に応じて、地域ごとの基準が設けられています。
例えば、
などなど。つまり建物を建てる場所によって守るべきルールが微妙に異なります。
これもすべて、その土地での暮らしを守るために設けられた、条件や安全の基準なんです。
さて、ここからが本題です。今回ポイントとなる『4号特例の廃止』とは、どういった法律なのでしょうか。
まずは大前提として、建物を建てる際、工事の着手前にその建物が建築基準法や各市町村の条例などに適合しているか確認する「建築確認」が必要になります。この建築確認の申請・審査を行わないと着工ができません。
そんな重要な「建築確認」ですが、実はこれまである特定の条件の建物においては審査の一部が簡略化されてきました。それが下記の条件です。
「木造2階建て以下」かつ「延べ床面積500㎡以下」かつ「高さ13mもしくは軒高9m以下」の一定規模以下の小規模建築物
例えば、木造2階建ての戸建て住宅や、小規模アパートなどがこの対象です。一般的な住宅なら当てはまることが多い条件ですよね。
こういった条件の建物は4号建築物と言われ、建築確認申請時には、構造や防火に関する詳細なチェックが免除されていました。これが「建築確認の審査の簡略化=4号特例」です。
そもそもこの「4号特例」はなぜ生まれたのでしょうか?それもやはり当時の時代背景が関係しています。
「4号特例」が導入された1983年、日本は高度経済成長期。住宅着工戸数が急増したために確認審査が追いつかない状況でした。そこで業務の迅速化と負担軽減を目的として生まれたのがこの特定です。今のようにデジタル化が進んでいない時代に、とても大きな意味があったのではないでしょうか。
これによりさまざまな項目が審査不要となりましたが、構造計算書の提出が必要ないということが大きなポイントになります。
なぜ今廃止?
4号特例廃止の背景には、2050年のカーボンニュートラル実現に向けたすべての建物の省エネ基準の適合の義務化と、省エネ化によって建物自体が重量化し、それに伴う構造の安全性基準への適合を確実なものに、という点が挙げられます。
これから益々社会全体は省エネ化へと進み、これまでの“経験”や“勘”といった曖昧なものから、担保の取れるより安全な建物がつくられる時代へと変わっていくでしょう。
次回の中編では、この4号特例廃止によって私たちの家づくりがどう変わったのか解説します!
専務取締役 阿部将也