つい先日、担当させていただいた工房のお引き渡しがありました。
こちらは主に木材を加工する工房となっていて、木とモルタル、塗装で仕上げたシンプルな空間が特徴です。
さて、工房で使われているこちらの照明。実はお客様ご自身で製作されたものです。
きっかけは建築計画を進めていく中で、お客様が旋盤を使って作った「木の器」を見せてくださったこと。美しい見た目とテクスチャーに感動し、どこかに活かせないかと考えていました。
それと同時に「私自身もぜひ木の器を作ってみたい!」と思い、実際に旋盤体験に伺ってきました。
刀の角度や力加減で仕上がりが大きく変わるとても繊細な作業で、思わず時間を忘れて没頭してしまいました。木材の樹種によって変わる色や木目の表情にも心惹かれ、とても楽しい体験でした。
その後の照明計画で、空間の雰囲気に合わせて「旋盤で作成した器を照明に使ってみてはどうか」とご提案しました。
お客様にも快諾いただき、シェード部分を無垢材で手作りしたオリジナルのブラケット照明をデザイン!
こうして、世界にひとつだけの照明が完成しました。
木の風合いをそのまま活かした素朴で飾らないデザイン。
既製品では味わえない、手しごとならではの豊かな表情が魅力です。
あかりを灯すと、壁にやわらかな影が落ち、空間にぬくもりと落ち着きを与えてくれます。
器の大きさや形によって光の広がり方も異なるため、住みながらシェード部分を差し替えていく。
そんな楽しみ方もしていただけるのではないかなと思っています。
また、キッチンの隣にある中央のカウンターテーブルの上部には、カウンターと同じ素材を使った2.5mの木製照明を造作しました。
木で製作した箱にライン照明を仕込み、光源が見えないように工夫。
照明にも木材を使うことで、空間全体に統一感が出て、木工房らしいあたたかみのある空間に仕上がりました。
手づくりのブラケット照明と、造作で仕上げた木の間接照明。
異なる個性を持ちながら、どちらも木のぬくもりが感じられる柔らかな空間を演出してくれています。
照明ひとつで空間の印象や雰囲気は一味も二味も変わってきます。
その空間一つひとつにあった照明も丁寧に設計していけたらと思っています。
設計 岡田