住宅の耐震性能 <構造計算の意外な落とし穴②>2023.11.08

前回の続きから構造計算の意外な落とし穴、2つ目のお話です。
 
その2. 「構造計算できます!個別にご相談ください!」の裏


想定外の大地震が増えた昨今、様々な工務店、ハウスメーカーでも【構造計算】を行う会社が多くなりました。ここで大切なのは、構造計算(特に許容応力度計算)が『標準』か『オプション』のどちらなのかということです。オプションで対応できるという会社は、構造計算への習熟度がしっかりあるか注意して見極める必要があります。(オプションとなっていても一概に習熟度が低いとは言い切れないため、あくまで“見極める”こと大切です)
 

 
というのも、構造計算はすでにプランができている状態でも「成り立つようにお願いします!」と依頼を掛ければ、専門家(構造計算事務所など)が何とかしてくれる、ということがよくあります。そのため、構造的に無理をしていて無駄な厚みの材料が入っていたり、計算する側が安全率をみすぎて無駄な構造材が入っている、なんてことも往々にしてあるのです。
 

 
普段から構造計算を行っていない(慣れていない)業者であれば、それらの点を指摘しないまま、上がってきた構造結果で「はい、終わり!」となってしまいます。それに対して普段から構造計算を行なっている会社であれば、そういった点に気づき「無駄な材料を削減していく」「梁の配置変更によりシンプルな構造にする」など修正を図ることが可能です。
 

 

 

実際にはこのようなトラブルが起きた事例もあります。

 

事例1.吹き抜けのど真ん中に「梁?!」


構造計算をする前は吹き抜けに梁が出ないように進めていたのに、いざ構造計算をしたら吹き抜けのど真ん中に梁が必要となってしまった。梁をなくそうとすると火打ち梁が出るなどデザインに影響が出てしまい、改善に至らないということで解約に至った。

 

 
構造上、吹き抜けは窓を大きく取るので耐力壁や梁が配置しにくく弱くなりがちです。だからこそ構造計算をする前から特に注意が必要な部位です。
 

 
事例2.リビングのど真ん中に「柱が…」


開放的なLDKを希望し、ようやく納得のいく間取りが決定!しかし、構造計算後にLDKのど真ん中に柱が出てくることが判明。工務店に異議を申し立てたところ、「構造計算をするまでわからなかったので…」というような解答があった。
 

 
もちろん構造上、大空間の場合には柱が必要なことはよくあることですが、着工直前に発覚したことが不信感に繋がってしまったようです。
 
事例3.天井高が低くなる?!


構造計算後の打合せにて、営業担当より「天井高さが変更になります」と説明があった。詳しく聞くと構造計算をした結果、梁の厚みが大きくなったため、計画の天井高さでは梁が天井からはみ出てしまうとのこと。それを隠すために100mm天井の高さを下げましょうということだったが、天井高さは譲れない要望だったため、泣く泣く間取りを変更、窓を減らすことになった。
 

 
「材料の厚みが想定よりも厚くなってしまう」という事例はかなり多く、弊社でも起きなくはないケースです。プラン作成の段階で天井の懐を大きめに取るなどの対応が必要です。
 
では、なぜこういった事例が起きてしまうのか?
その理由は、上記の通り構造計算に慣れていないのが1点ともう一つ。よくありがちなのは「間取りから計画している」という点があります。
 

 
「え?間取りから建物を計画するんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、よくある以下のような家づくりの流れを見てみましょう。

これはお客様にとって親切なように見えて、外観デザインやコスト面、構造面から見ると実は不親切です。
それはなぜか?阿部建設での流れのひとつを例にとってみます。
 
阿部建設では、まずこのように建物の大まかなフォルムを決めることからはじめます。
 

 
そうすることによって、自然と無理な間取りや建物の無駄な凹凸を避けることができます。結果、コスト、外観デザイン、間取りの3つがうまく成り立つように計画された建物となり、強い構造体へと繋がっていきます。
 
それを実現するために、阿部建設が行なっているのがカンファレンスです。“カンファレンス”とは、一組のお客様に対して複数人でプランを書き、意見交換をしながら1つにまとめていく作業のことを言います。この作業によって、偏りすぎない俯瞰的思考が生まれ、バランスの取れた家ができあがっていきます。
 

 

各社さまざまなやり方で、構造に強い家、地震に強い家づくりに取り組んでいます。しかし、「構造計算ができる=安心」というその裏には、もしかすると他の要素が十分に考えられていないのでは?という可能性が隠れていることもありますので、注意が必要です。

 

 
事例で挙げた内容はほんの一例ですが、弊社でも起こりうることです。しかしながら、これまでの経験や会社の知見を活かして、そもそも起きないように予防すること、起きた際にリカバリーできるノウハウが重要だと考えています。
 

 
構造というのは、誰もが高い性能であることを希望します。しかし、構造計算によってそれは叶えられるものの、将来の改修やコスト面など、実は他の重要な要素が犠牲になっていることも往々にあります。一棟一棟全く違う注文住宅だからこそ起きる問題ですが、それらの不安をなくすひとつの手段は、“信頼できる建築会社を選ぶこと”だと思っています。
 

 
一般のお客様にはなかなか理解しきれない分野だからこそ、プロの力が試されます。一棟一棟丁寧に家づくりに向き合い、高いレベルで実現していくのが私たち工務店の強みであり、使命だと思っています。
 

 
ぜひ住まいを考える際には「大手だから」「構造計算をしているから」という言葉の安心感だけに捉われず、その一歩先へ。なんでも聞けて相談できる、信頼できる会社選びをしてみてください。
 
次回は、今回出てきた阿部建設の【カンファレンス】について、ご紹介します!
 
 

業務企画室 室長 阿部

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