各務原の家、にて2024.08.30

みなさんこんにちは、設計の今枝です。
今回は、先日お引渡しを迎えた岐阜県各務原市のお住まいについてのお話です。
先日のスタッフブログバリアフリーの家って?とは別の角度から、家づくりエピソードをご紹介します。
 
まず住まい手さんですが、「車いす建築士」阿部一雄 バリアフリーYouTubeチャンネル にも登場していただいている上田進太さんです。2015年に弊社でご自宅のバリアフリー改修をお手伝いさせていただきました。
 

▼詳しくは、下記YouTubeチャンネルをご覧ください。
# 17-前編「自立をサポートするバリアフリー住宅」
#17-後編「充実した生活を支える“住まいづくり”とは?」
 
さて、そんな上田さんから昨年の5月に新たな家づくりのご相談をいただきました。今回は、上田さんご夫妻が暮らす新築住宅です。まずは社長の阿部と一緒に訪問。上田さんからイメージやご要望を伺いつつ、こちらからは阿部建設の家づくりについてご説明しました。
 
会社に戻ってさっそくプランづくりを進めます。
いつものように設計スタッフが集まりカンファレンスを行いプランを作成しました。今回はオーナー様宅ということもあり、社長も「参戦」です。
上田さんへの初回プレゼンでは、スタッフが描いた【今枝プラン(A、C)】、【社長プラン(B)】の3つを、“名前を伏せて”ご提示しました。
 

一通りプランの説明を終えたのち、上田さんご夫妻にどのプランで進めるか伺います。
 
今枝「(ドキドキ…)」
社長「………」
上田さんご夫妻「…Bがいいよねえ。Bでお願いします。」
社長、今枝「!!」
今枝「…(ショボン)」
社長「お!実はBプランは私が描いたプランなんですよ。残りの2プランは今枝が描いたプランでね、おもしろいし、悪くはないんだけどどね。ワハハハハ!!」
上田さんご夫妻「…そうなんですね。あははは。」
 
というわけで、社長のプランで進めることに。
その後本格的な設計打合せが始まると、上田さんからこんなお話を頂きました。
「その昔、お爺様が趣味で収集していた無垢の一枚板を今回の家づくりで使いたい。」
こういったお話は我々つくり手の経験や知識はもちろんのこと、住まい手さんの自然素材への理解が必要です。
 

 
まずは材料の下見に伺います。初めて訪れたのは8月。名古屋から車で2時間、空がとてもきれいなところです。
 

その後プランもほとんど固まり、造作に必要な天板の大きさも分かってきました。
「どの材料をどこに使うのか」まだ雪の残る3月に、設計スタッフの三宅を連れて再度お邪魔しました。
最初に訪れた倉庫。材料が綺麗に保管されています。
 

もう一つは、坂の上の倉庫。こちらは4m近い長さの大きな材料が保管されていました。
野ざらし…いや、天然乾燥というやつです。
 

あらかじめ図面で必要な材料の寸法を拾い出しておきます。
こちらはおそらくタモ材。
上田さんのご要望で窓枠や建具枠はタモ材を予定していたため、相性はバッチリです。
現場では材料の状態、木目や割れを見つつ虫食いの状態も予想しながら、写真のようにチョークライン(青色)という道具を使い実際に使う場所を検討します。染みや割れも大きく、正直なところ製材して綺麗になるか全く自信がありませんでしたが、上田さんのご理解もありこのまま製材を進めることにしました。
 

こちらは比較的状態の良いケヤキ。国産広葉樹の代表のような材料です。
購入時のタグを見ると共木(同じ一本の樹から採れた材料のこと)のようで、兄弟のような間柄です。4mを超える長尺のカウンター材は一枚の板で賄うことが難しく、どこかで継ぐ必要があります。たとえ目が不揃いでも共木なのできっと馴染んでくれるだろう、この材料はもってこいだと感じました。
 
と、こんな感じで材料の選定を行い、後日、製材業者に持ち込みます。
 


 
いざ、材料引き取りへ。そこでトラブル発生です。
坂の上の材料はトラックで上まで行き、人力とユニック車で積み込みを行う予定でしたが、まだ雪が残っておりトラックが坂を登れない…。
上田さんのお婆様が町内会長までお声かけ下さり、ユンボ(写真の重機)の出動です。雪の残る坂道、正直安全面ではかなり心配でしたが、なんとか坂の上まで辿り着きました。
 

坂の上の材料は無事引き取られ、養老の製材工場に向かいます。
 


  
製材工場で打合せを行います。
引き取りの際に大まかな寸法を指定していたため、ある程度「顔」が現われた状態で、最終的にどのあたりを使うか、ベストな状態を探ります。
 

 
実際に現場で組み上がった家具のひとつ。
いつも以上に迫力のある材料の登場に、大工さんはもちろん電気、水道、塗装業者さんも興奮していたのを覚えています。
全部で10枚ほどでしょうか。ケヤキ、タモ、トチなど色味も木目も様々ですが、互いに馴染んでおり、ここにしかない家づくりができたかなと思います。
 

最後は植栽工事です。
上田さんを稲沢の農園にお招きし、植栽の打合せを行いました。お庭に実際に植える木々を選びます。
 
同じ樹種でも一本立ちや株立ちなど、様々な樹形があります。
あらかじめいくつかの樹種を見繕っていましたが、実際に農園で見た後に変更したものもありました。完成後に植栽の向こうに見える板塀の色味や高さなどもイメージしながら選んでいきました。個性ある樹木が上田さんのお庭を彩ります。
 
ご実家の改修から新築へ、お爺様からお孫さんへの唯一無二のプレゼント、完成見学会当日の夜は上田さんを現場にお招きして灯りを楽しむ特別な時間を過ごすなど、多くのストーリーや思い出が生まれた家づくりであったように思います。
 
お引き渡し当日に喜んでくださり本当に良かったです。
上田さん、今後とも末永いお付き合いをよろしくお願いいたします。

 
 

設計 今枝

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