2024年も残りわずかとなりました。阿部建設は本日が仕事納めです。
毎週更新してきたスタッフブログも、今や私たちの重要なコンテンツとなり、お客様から「ブログを読みました!」とお声かけいただくことも増えてきました。少しずつですが、自分たちの思いや活動が皆さまに届いていることを実感した一年でした。
さて、改めて今年を振り返ってみると、自然災害、社会問題、オリンピックなど、年明け早々から絶え間なく起こる出来事に一喜一憂するような、激動の一年でした。
元日に発生した能登半島地震に始まり、連日ニュースに取り上げられている闇バイトの横行や紅麹サプリの問題、政治分野においては、裏金問題やねじれ政権の誕生、兵庫県知事選など、例年に比べ大きな動きがありました。悲しく、不安な出来事も多かった一方で、大谷選手の50-50達成や新紙幣への切り替え、パリ五輪での日本選手の活躍など、元気をもらえるような前向きな出来事もたくさんありました。
そんな2024年ですが、阿部建設にとっても大きな変革の年となり、さまざまな挑戦と学びがありました。その背景には、先行きの見えない“経済の不確実性”と、それに伴う住宅業界の大きな環境の変化がありました。
1. 住宅購入者を取り巻く環境の変化
世界的なインフレ圧力や金利上昇は、住宅業界にも大きな影響を与えています。特に住宅購入の資金源となる住宅ローン。日銀がマイナス金利政策を解除し、17年振りに金利の引き上げを決めたことをうけて住宅ローンの金利が上昇しました。たった0.15%という数字ですが、一般的な借入期間が35年と考えると、その影響はかなり大きいと言えます。さらに昨今の原材料高騰の影響も踏まえれば、住宅を購入することそのもののハードルが上がったことは否めません。
また住宅価格は、単に建物だけでなく、その年ごとに変わる補助金や税制面の影響を受けます。それと同時に“表に見えない費用”という少しやっかいな側面も持っています。その費用もインフレにより高騰し、予想以上に購入費用が掛かってしまった、というケースも珍しくありません。
「家を建てたがいいものの、生活が苦しくなってしまった。」住宅を提供する側としては一番悲しいことです。
そこで阿部建設では、これから発生するであろう費用をあらかじめ盛り込み、その上で補助金の積極的活用と税制面も踏まえたトータルコストをご提示するようにしています。また、土地価格も諸費用まで落とし込んでご説明することで、想定外の費用を少しでも減らすよう努めています。そのためか、最近「坪単価」と言う言葉をお客様からあまり聞かなくなりました。(結局「坪単価」というのは、何の費用が入っていて何の費用が入っていないのか、とても曖昧なのです)総額でのお話ができることで、家づくりもスムーズに進んでいくようになりました。
住宅購入のハードルが上がる一方で、依然として「家を持ちたい」「住環境を良くしたい」というニーズは根強いと感じています。「衣・食・住」は、人が生活していく上でなくてはならないモノです。実際に、阿部建設の見学会やモデルハウスにご来場されるお客様の数は例年と比較してもさほど減少しておらず、逆にここ最近は、近隣の方からのリフォームの問い合わせなどが増えてきました。注文住宅の着工戸数は減少の一途を辿っていますが、住宅価格の高止まりや物価上昇に伴う実質賃金の減少が影響して、“建てたい人は多くいるけれども、建てることが難しい”というのが、今の実情ではないかと思っています。
2. ニーズの変化
今年一年を通して私が強く感じたことは、お客様の「家に求める価値」が以前よりも複雑で多様化しているということです。これまでの住宅は、価格や広さ、パッと見のデザインが重要視されてきました。今はそれらに加え、断熱性能や耐震性能、自然素材などの健康志向、再エネや省エネ、さらにはテレワーク、共働き、趣味など、ライフスタイルに合わせた設計も重要視されています。
ほんの少し前は「デザインだけにこだわっていれば」「自然素材だけにこだわっていれば」「とにかく安ければ…」何か一つ強みを持っていれば輝ける時代でした。しかしお客様のご要望が多様化する今、そうは言っていられない時代がやってきたと感じています。ただ「良いものだけ」をつくっているだけではダメなのです。(本当に厳しい時代になりました…)
このことは、市場経済が成熟したことを意味しています。
「良いもの」をつくることは当たり前、そこにどんな「付加価値」を付けることができるのか?性能も良く、デザインも良く、ライフスタイルに合わせた設計で、コストも悪くない。多様化したニーズに応えるためには、バランスのとれた『総合力』が求められています。
阿部建設では、それを『フルオーダー』という手法で実現してきました。どんなお客様が来ても柔軟にお応えできるということは大きな武器で、私たちの得意技です。
一方で、SNSや動画配信など誰でも手軽に情報が入手できるという時代背景が、ニーズの多様化につながるひとつの要因になったと考えられます。プロでなくても専門性の高い情報発信ができる今、SNSで見た第三者の情報を参考に購入を決める。高単価の住宅さえもそんな領域に入ってきたと思います。
そこで大切にしたいのが、多くの経験や確かな知識を持つプロとしての視点です。誰かが発信しいている「良いもの」が本当にお客様の暮らしに合っているのか?一邸一邸丁寧につくりあげるフルオーダー住宅だからこそ、この見極めが私たちの重要な役目のひとつでもあると感じています。
3. 建築業界の課題とは?
今年の建設業の倒産件数は、過去10年間で最多ペースとなっています。帝国データバンクの調査によれば、今年の10月までで倒産件数は1566件にのぼり、8年ぶりの高水準を記録した前年を上回っています。もちろん、この数の企業全てが住宅業界と言うわけではないですが、建設業の厳しい現状が見えてきます。
では、なぜ倒産してしまうのか?
仕事がなく売り上げが上がらず…という要因が最も多いわけですが、実は、人手不足や後継者不足で倒産してしまう企業もかなり増えてきています。労働力不足は依然として深刻な問題であり、職人や建設技術者の確保は難しさを増す一方…。特に地方では、建設スケジュールの遅延や人件費の上昇が懸念材料となり、職人不足への対応に苦慮するケースが多かったのが実情です。
阿部建設でも決して人ごとではありませんが、幸いなことに年間着工戸数を24棟に限定していることや、近隣の工務店、職人さんたちとネットワークを組むことで、職人不足の問題に直面することなく信頼のできる仲間と一緒に仕事が続けられています。
そんな建設業界もデジタル技術の導入が進み、業務の効率化・人手不足解消の糸口として期待されています。
阿部建設では、3DCADを用いた設計、360度カメラを活用した現場の安全・品質管理、さらにはクラウドを用いた施工管理の効率化など、早くから積極的にIT技術の活用をはじめました。これにより、工期の短縮や施工精度の向上、さらにはコスト削減が実現し、結果としてお客様により高品質な住宅をご提供できるという成果も上がっています。
また、依然として続いている材料費の高騰に対しては、代替材料の選定や仕入れ先との連携強化、設計自体の見直しなどを行い、高い品質を保ちながら少しでもコストを抑えられる策を講じてきました。来年も引き続き、効率的で持続可能な資材調達を行い、お客様に高品質な住まいを最適な価格でご提供できるよう努めていきます!
コンビニの数より多いと言われる建設業も、いよいよ淘汰される時代に入ったと感じています。
その中で生き残るには「良い会社」にしていくことが重要です。「良い」という定義は幅広くさまざまですが、お客様・従業員・会社、ひいては地域も加えた「四方良し」の会社を目指しています。
来年はいよいよ阿部建設創業120周年を迎えます。建設業の中には100年を超える企業は多くありますが、初代から建築に携わって100年以上、というの企業は実は少ないことをご存知でしょうか?時代に合わせて官公庁の仕事、マンションなどの大型建築に携わり、今は住宅、施設建築、リフォーム・リノベーション、不動産業を中心に、時代のニーズに合わせつつ「建築」と言う軸をぶらさずに仕事をしてきたことが阿部建設の強みだと考えています。次の100年のために、時代を超えて皆さまに愛される企業であり続けるために、これからも柔軟に、そして確実に歩みを進めていきます。
120周年を迎える私たちにとって、この先の100年はまた新たな挑戦となるでしょう。お客様にとって価値のあるサービスを提供し、成長し続けていけるように全力を尽くしてまいります。
今年一年、家づくりや施設づくりを通してオーナー様と素晴らしい関係を築けたことに心より感謝申し上げます。
皆さまどうぞ、良いお年をお迎えください。
専務取締役 阿部 将也