こんにちは。
設計の今枝です。
突然ですが皆さんはスーパーで食材を購入する際や飲食店で食事をする際、産地などを確認することはあるでしょうか。
ここ数年ですが、普段仕事をするなかで「この材料はどこから来て、どこへ行くのか」ということに興味を持つようになりました。優れた料理人は自ら市場に出向き、また生産者のもとを訪ねることもあるようで、ああ、やはり大事なんだな、と感じます。
トレーサビリティ的なものです。

まずは本から、
「よくわかる土中環境/高田宏臣」
「日本人はどのように森をつくってきたか/コンラッド・タットマン」
この2冊は私たちが扱う木材がどういった場所で生まれるのかを考えるきっかけとなった本です。
これらを読み進めるなかで、偶然にも知り合いの設計事務所が「森とすまいの会」なる活動をしていると知り、去年の春から定期的に参加しています。
場所は静岡県浜松市。詳しい方はご存じかもしれませんが「天竜杉」のおひざ元です。
活動内容は、勉強会をはじめ、住宅や文化財の見学、家づくりについての語らいなど、多岐にわたります。
林業、製材、設計、工務店、職人、住まい手など、さまざまな職種・立場の方たちが参加し、つながり合うこの取り組みに、とても魅力を感じました。

また、参加している方の多くが、柱や梁などの構造材を壁や天井の中に隠さない、「あらわし」の家づくりを行なっています。材料の使いどころはもちろんのこと、採れる寸法から考えられた間取り、木配りや寸法の見た目の美しさなど、細部まで気を配った取り組みを見聞きする機会も多く、この活動に参加するたびに刺激を受け視野が広くなっていく気がしています。
とある時期に、「山を歩く」回が開催されました。
材料を活かした家づくり、その川上である「山」を歩くわけです。

山主である住まい手が「自分の山の木を使って家を建てたい」との一言から始まった家づくり。
山の地形を見極めながら作業道をつくり、大きな重機を使わないある種の途方もない「小さな林業」の紆余曲折を、山主と林業家に案内していただきながら伺いました。
「山を生かすために良い木を残す」という言葉が非常に印象的でした。
良い木がなくなってしまえば、人にとってその山は価値がなくなってしまい、いずれ荒廃していく。 それはいずれ麓に広がる街にも影響を与えるでしょう。 川上を守る人々の視野の広さに感服しました。
さて、川上の次は川下です。
一般的に木造住宅の流通経路は山を川上とし、製材・建材業者・問屋を川中、私たちのような工務店を川下と呼ぶことが多いようですが、果たしてそうでしょうか。
日々現場で発生する廃材を見ていると「これらはどこに行くのだろう」と考えることがあります。
新築工事の他にも建て替えや改修工事の際には解体があり、建物をつくる準備の段階でも廃材が発生するわけで、川下と呼ばれる工務店の“その先”があるのではないか、と感じるわけです。
とある日、産業廃棄物処理業者から新規営業の電話がありました。
話を聞くと、「引き取った廃材は自社工場でリサイクルしている」と言います。知識としては知っていましたが実際には見たことがありませんでした。これは社会見学のチャンス、ということで工場の見学を申し出ると快く引き受けてくれました。

▲工場の内部と分別された産廃たち

▲分別されていない「混載」は手作業で分別していきます

▲梱包や仮設の建材など、建築の現場ではビニールの廃棄物が大量に発生します

▲ビニールの廃材は圧縮され樹脂ペレットに

▲解体現場で発生した木材
木材は製紙会社に販売、ビニール類はペレットとして燃料に再利用されるなど、6~8割が資源として活かされています。単純に産廃を収集するのではなく原料を収集し、商品を生産しているのです。工場長に案内されながら半日ほど見て回り、川下で何が起きているかを知る良い機会となりました。

今回、川上と川下を訪ねたことで、材料が持つ背景や意味を改めて考えるようになりました。
それらが設計のヒントになり、建物の厚みや奥行きを増していくような気がしています。
設計 今枝