前回のブログ「シンプルなデザイン」は簡単? -1では、Tさまとの出会いから、土地探し、間取りやデザインに至るまでの考えをご紹介しました。今回は、実際に仕上がった空間をご紹介していきます。
● 空間構成
余白を残した空間づくりのため、1階にLDK、2階には洗面・脱衣室、浴室などの水まわりと個室を配置しています。廊下を可能な限り減らし2階に水まわりをまとめることで、1階のLDKとパントリー空間をゆったりと広めに取ることができました。
● 1階
しっかりと収納量を確保した玄関の土間収納。空間を仕切らずL字型で繋げることで、ゆとりのある空間となっています。
リビングは床面を一段下げて空間に変化を付けました。必然的にリビングの天井が高くなり、LDKはほぼ同一天井面でありながら、中心スペースに広がりが生まれます。
ダイニングスペースはコンパクトながら、勾配天井によって奥行きを感じる空間に。外の景色を切り取った窓とそこに映る緑も、家族の食卓を彩ります。
シックなオーダーキッチンは家族みんなが使いやすい二列型。カウンターはバーカウンターとして愉しむことができます。キッチンはスタイリッシュに、リビングダイニングは柔らかさを残しています。
キッチンの隣にはパントリー兼ご主人の書斎があります。収納は造作で可動棚を多く採用しました。今回納戸のような大きな収納空間は設けず、個々のお部屋に必要な分だけの収納をつくっています。
壁、天井、床、造作材、照明など、空間に出てくる水平・垂直ラインを整理することで、インテリアや小物、アイアンの手すり、木の柱などがアクセントとなり生きてきます。
● 2階
階段を上がった先には、デスクカウンターを設えた趣味室があります。適度な距離感を保ちながら、1階との音の繋がりによって家族の気配を感じられる空間です。
浴室から続く洗面・脱衣スペースは広めにとり、室内干しをしてもゆとりのある空間に。インナーデッキにも隣接しているので、室内・室外どちらでもすぐに干すことができます。水まわりを2階にまとめることで、家事動線が平面で完結すると同時に、1階のパブリックなスペースの生活感を抑えることができます。
洗面・脱衣スペースと隣接するインナーデッキは、風と光を取り込みながら格子のルーバーによってプライベートを感が生まれます。外からの視線を気にすることなくセカンドリビングとしても使えますし、お風呂上がりには家族でゆっくり過ごすこともできる心地良い空間です。
寝室は板張りの勾配天井と塗装クロスの仕上げで和モダンなテイストに。一日の疲れを癒す、ゆったりと落ち着きのある雰囲気に仕上がりました。
● 外部
視線を遮る外付けルーバーでプライバシーを確保しつつ、メインの採光は南側から取っています。外構も緑を取り入れた、柔らかさを感じるデザインです。
外観はシンプルさはそのまま、軒をしっかり取り、アクセントと機能性を兼ね備えた木の目隠しを採用しました。
Tさま自身がご夫婦ともに具体的なイメージをお持ちだったので、最初の提案プランから大きく変わることなく微調整で進んでいきました。逆に言えば最初のプランがTさまと土地にとても合っていたのかなと感じます。
ご要望より敷地面積が小さくなってしまったことと日当たりのことが気掛かりでしたが、出来上がってみると、車スペースはもちろんお庭もしっかりと確保でき、日当たりも良くなりました。打合せを進める中で、オーダーキッチンの採用や造作で当初の予算より大きく増えてしまいましたが…。笑
一言で「シンプル」「カッコ良い」と言っても、お客さまの好みや思い描くイメージはそれぞれ違います。イメージの共有や目指すデザインのゴールが曖昧なまま進めることで、結果的に、設計者の価値観や好みが先立った空間に仕上がってしまうことは避けなければいけません。逆に、お客さまの描くイメージをディテールから家全体まで立体的に考えトータルコーディネートしながら、“機能性と遊び心のある空間づくり”をプロの目線で具現化していくことも重要だと考えています。
私たちが大切にしているのは、「お客さまとしっかりと対話しながら、焦らずじっくり、一つひとつ形にしていくこと」。お客さまにとって納得のいく家づくりができるよう、全力でサポートができればと思っています。
Tさまのお住まいは、お客様の声「おうち時間の楽しみが広がる家」でもご紹介しています。このブログでは設計の立場からお話ししましたが、お施主さまの立場から家づくりを語った生の声です。ぜひご覧になってみてください。
Tさま、この度はありがとうございました。これからの「くらし」をぜひ愉しんでください!
業務企画室 室長 阿部