2025年4月建築基準法改正!知っておきたい重要ポイントとは?(後編)2025.08.27

今回は、前編中編の『4号特例の廃止』と同じく、建築基準法で大きく変わった『省エネ基準適合の義務化』ついて。

 
2025年4月、ついに「すべての新築住宅」に対して省エネ基準の適合が義務化されました。
とはいえ、「何が変わるの?」「うちの家づくりに関係あるの?」と疑問に思われる方がほとんどだと思います。
今回は制度の中身はもちろんですが、“法改正の背景”や“現時点で予想できる未来”という視点も含めて解説します。
 

 

「省エネ基準適合の義務化」ってなに?


簡単に言えば、家を建てるとき「その家が十分な省エネ性能を備えているかどうか、事前審査が必須になった」ということです。
今までは、建築士の設計段階では自己チェックだけで済んでいたものが、これからは確認申請を出す前に、専門機関による省エネ性能の適合判定が必要になります。
 
しかしこれまでも、省エネ性能について“説明”や“届出”は義務でした。
ではなぜ今回、適合判定が必要になったのか?
実は省エネ性能の『適合』までは義務づけられていなかったことで、基準を満たしていない家も建てることができてしまっていたからです。
 
今回の改正では、住宅においてもほとんどすべての規模で『適合』が義務化されました。
「省エネ性能はあまり興味がないし…。性能なんてなくても良いでしょ?」
と思っている方でも、これから「家を建てよう」と考えているほぼすべての方に関係がある制度となったのです。
 

出典:国土交通省(※クリックで拡大画像が表示されます)
 

なぜ今、『省エネ基準適合の義務化』が必要なの?


背景にあるのは、「パリ協定」をはじめとする国際的な脱炭素化への合意です。
2015年に190を超える国と地域が参加し、「地球の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃未満、できれば1.5℃に抑えること」が目標として掲げられました。
この目標に向けて、日本政府も国としての具体的な数値目標を掲げています。
 

  • 2050年カーボンニュートラル
  • 2030年までに温室効果ガスを46%削減(2013年比)
  •  
    目標達成のためには、日本のエネルギー消費の3割を占めている建築分野のエネルギー消費を大幅に減らす必要があります。すでに非住宅については適合が義務化がされていましたが、いよいよ「住宅の省エネ性能の底上げ」が不可欠になってきました。
     

     
    日本の省エネ基準は、世界基準から見ると「まだまだ低い?!」


    実は日本の現行の省エネ基準は、1999年に導入された「次世代省エネ基準」と同水準。
    つまり今回の義務化で求められる性能は、20年以上前からほとんど変わっていません。
    逆を言えば、1999年の省エネ基準が当たり前になってきたということですが、世界的に見れば、実はかなり遅れをとった数値といえます。
    世界と比較するとどうかをまとめてみました。
     

    ようやく義務化されたとはいえ、日本の基準は世界から見ると“スタートライン”に立ったばかりなのです。
    そのため、これから基準はさらに上がると言われています。
    政府は2030年に「ZEHレベル(断熱等級5〜6)」の基準化を目指しており、太陽光発電システム設置の義務化が東京都で議論されるなど、今後は省エネ設備だけではなく創エネ設備についても基準ができるかもしれません。
    今の基準を“最低ライン”ととらえ、これから先も安心して暮らせる家を建てるという視点が欠かせません。
     
    阿部建設では、基準ギリギリではなく、「10年後・20年後にも快適に暮らせる家」を指針に、UA値0.46の設計をベースにしています。
    もちろん、ご要望によってはさらに高い性能や、UA値だけに頼らない“断熱=快適な暮らし”を考えたお住まいもあります。
    数年先ではなく、これから何十年先の未来にも残せる家を一邸一邸つくりあげています。
     

     
    義務化される省エネ性能の中身とは?


     

    1.外皮性能(UA値・ηAC値)
    ・UA値…住宅全体の断熱性能(数値が小さいほど高性能)
    ・ηAC値…日射熱の入りやすさ(夏の暑さ対策)
    地域ごとに定められた基準値を下回る断熱設計が必要です。
     
    2. 一次エネルギー消費量(BEI)
    ・設備(冷暖房・給湯・照明・換気など)のエネルギー効率を数値化
    ・BEI(Building Energy Index)が1.0以下であること
    簡単に言えば、「建物から熱を逃げにくく、入りにくくする」+「省エネな設備を使う」という2点が義務化されるわけです。
     
    「なんだか難しい…」と思われる方も多いかもしれませんが、そこはプロにお任せください!
    阿部建設では、断熱性能と設備効率の両面から、最適バランスを設計段階でシミュレーションし、特にご要望がなくとも太陽光発電システムを載せればZEHになるように設計を行っています。
     

    “数値通り”に建てられていない家がある、という事実


    いくら住宅性能が高いレベルで義務化されても、また、図面上や計算上で優秀であっても、現場で建てられる住宅は「現場での施工が伴わなければ意味がない」というのが現実です。
     
    たとえば良くある現場でのミスは、

    • 隙間の空いた断熱材施工(無断熱の部分が出てしまう)
    • 気密処理の不足(外気が入ったり、内気が逃げていってしまう)
    • サッシや構造材(特に鉄骨造)まわりの熱橋(熱が出入りし、結露が起こりやすくなる)
    •  
      これらがあると、カタログ通りの断熱性能はまったく発揮されません。
      ある第三者検査機関の調査によると、新築住宅の5割以上に断熱の不具合があるという報告もあります。
      実際に弊社でもヒューマンエラーの発生リスクを考慮して、施工時と現場担当者のダブルチェックはもちろんのこと、第三者検査機関の専門家による断熱材の施工チェックも行っています。進めています。
      万が一のミスが起きないように、また、図面・計算通りの性能を確実に発揮できるよう、品質管理にも力を入れています!
       

       
      省エネ住宅は、コストではなく“暮らしの質”への投資


      省エネ住宅というと、「設備や断熱材にお金がかかりそう…」と心配される方も多いですが、視点を変えるとこんなメリットがあります。
       

      住まいは、多くの人が人生で一番長く過ごす場所です。
      だからこそ、省エネ性能は「贅沢」ではなく「あたりまえ」として考える時代となってきたと言えるでしょう。
       

      阿部建設が考える、これからの住まい選び


      2025年の省エネ基準義務化は、国としてあくまで「最低ラインの確保」が目的です。
      これからは「より先を見据えた性能」「将来の基準にも耐えられる設計」が求められます。
      阿部建設では、以下を大切にしています。

      • 数値はもちろん、計画値の確実な実現・施工品質にこだわる
      • 数値に表されない、暮らしやすさを考えた環境設計
      • ZEH水準(断熱等級5〜6)の標準化 ※すでに対応済み
      • 暮らしやすさ・健康・家計のすべてに効く設計提案
      •  

        今回の法改正は、日本の住宅性能において大きな転換点となるものです。
        「すべての住宅に構造計算・省エネ基準が義務化される」ということは、これまでバラつきのあった住宅の質が、ようやく一定の土台に乗るという意味でもあります。これは単なる制度の変化ではなく、日本の住まいの当たり前が、ひとつアップデートされる契機だと私たちは考えています。
         
        こうした時代の節目には、お客様自身が改めて「本当に良い家ってなんだろう?」と考えること、そして私たち建築会社も、今までの常識にとらわれず、新しい価値や考えを学び、将来を見据えて進化し続ける姿勢が求められていると感じます。
        阿部建設は、家を建てることをゴールではなく、ご家族皆さまの物語が始まるスタート地点だと考えています。
        だからこそ、法制度のさらに先へ目を向け、「そこにどんな暮らしが生まれるのか?」「これから先、何十年先も快適で安心して住まうことができるか」「本当の暮らしやすさとは何か?」などの視点を、これからも大切にしていきたいと思います。
         

        今後も、法改正や社会の変化をきっかけに、私たち自身の価値観や設計のあり方をアップデートし、「これからの時代にふさわしい住まいとは何か」を皆さまと一緒に考えていけるように情報発信していきます。
        どんな小さな疑問や不安でも構いません。
        少しでも気になる事があればお気軽にご相談ください。
        皆さまの「これから」に寄り添う家づくりを、全力でサポートいたします。

         
         

        専務取締役 阿部将也

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