設計の佐藤です。
慌ただしく過ぎていく日々のなかでも、建築に触れる機会を大切にしています。
今回は高知県を訪れ、いくつかの建築を巡ってきました。その一部をご紹介します。
① 牧野富太郎記念館
高松市から、車でおよそ2時間。
牧野富太郎博士の業績を顕彰するため、昭和33年に植物園が開園し、平成11年に記念館が建てられました。
設計は建築家の内藤廣さんです。
正門からエントランスまでのアプローチでは、山から川、そして海辺へと移りゆくように、高知の豊かな植物を体感できます。
歩くほどに景色が変わり、自然の流れの中に身を置くような心地よさがありました。
通路の脇に「シャリンバイ」を発見。
伊礼智先生の物件で行われた、造園家の荻野寿也さんの植栽ワークショップで初めて出会った植物です。
厚みのある丸い葉がかわいらしく、ブルーベリーのような実をたくさんつけていた姿が印象的でした。
その後、住宅の庭でもよくご提案させていただいています。
こちらは展示館から眺める北庭の植栽園。
緩やかなカーブを描く低く深い軒(軒の高さは、つま先立ちで触れられるかどうかの2,3mくらい)が室内へ入る光をやわらかく遮り、対極的に外の明るさと緑の鮮やかさが際立ちます。
屋根を支える垂木は幅が150mmくらいありそうな集成材で、1本1本はとても太い材料です。
軒先が軒樋の少し上で水平にカットされ、これにより内外の一体感を一層強調する要素になっているのではないかと感じます。
屋根を支える集成材の垂木は十数メートルもある巨大な材料で、てっぺんにある魚の背骨のように通る棟木のスチールパイプと1本1本金属のプレートで繋がれています。
それぞれ角度も長さも違う材料なのに、どうやって水平をそろえられたのか、想像も及ばない技術力の基に建っている建築でした。
住宅を設計する時は、敷地のなかで一番気持ちの良いところはどこだろうかと、現地で陽の入り方などを確認して回ります。
この北庭の贅沢さに倣い、必要なところに光が落ちる空間は、心が落ち着く居場所のひとつになるのではないかと感じました。
一方で、雨の日にも訪れてみたくなるような奥行きと静けさも感じられ、時の流れや自然の移ろいが、この建築の魅力をより深めているようにも思いました。
次回また訪れる機会があれば、ベンチに座ってゆっくりと楽しみたいです。
② 竹林寺 納骨堂
牧野富太郎記念館から徒歩5分。
第31番札所、竹林寺の境内に建てられた納骨堂。 建築家の堀部安嗣さんの設計です。
中の写真は控えました。
初めて見た屋根葺きと軒先の納まり。どこかで使ってみたい…。
③ 沢田マンション おまけ
オーナー夫妻がDIYで建てられたという、全国的にも有名な建物です。
一部は見学が可能ですが、訪問した時間が遅く、外から外観のみ見学させていただきました。
屋上には建築時に使われたという手づくりのクレーンが残されており、その存在感に驚かされます。今も「入居者募集中」の看板が出ており、建物が生きつづけているようでした。
現地でその空気に触れると、図面だけでは得られない多くの学びがあります。
また折を見て、こうした建築を訪ねてみたいと思います。
設計 佐藤