家づくりの「当たり前」が変わった、 2025年を振り返る2025.12.27

2025年も残りわずかとなりました。
年末になると「今年はどのような一年だったか」と立ち止まって振り返る方も多いのではないでしょうか。
良いことも、思うようにいかなかったことも、それぞれの一年があったと思います。
 
阿部建設は今年、創業120周年を迎え、この節目の年に社内外のさまざまな改革に取り組むことができ、実り多い一年となりました。
では、住宅業界全体に目を向けるとどうでしょうか。
金利のある世界への移行、建築費の高止まり、住宅着工戸数の減少、さらには建設業界全体での倒産増加など、不安を感じさせるニュースが多く報じられ、決して楽観できる一年ではありませんでした。
一方で、住宅購入を検討する一般消費者の方々にとっては、『前向きな変化』が確かなものとして根付いてきたように感じます。
そこで今回は、2025年の住宅業界の動向を振り返りつつ、注目すべきトピックを整理してご紹介します。
 

 
省エネ性能は「特別」ではなく、「前提条件」に


住宅業界において、いまや省エネ性能は避けて通れない話題です。
2025年4月から、原則すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務化されました。
 

(出典:国土交通省HP)
 
これまでの高断熱住宅は「コストが高く、一部のこだわり層向け」「会社選びを間違えると性能に大きな差が出る」といった認識でしたが、この制度施行によって、省エネ性能は「住宅の前提条件」として定着しました。現在では、

  • どの会社で建てても、最低限の性能基準が確保できる
  • 「知らないうちに性能の低い家を建ててしまう」といったリスクが減った
  • 高断熱部材や設計が一般化し、導入コストも抑えやすくなった

など、消費者にとっての安心材料が確実に増えています。
性能の高い家は、冬の寒さや夏の暑さ、結露やカビの発生を抑え、光熱費の削減にもつながります。そんな家が当たり前の時代になったことを、多くの方が実感しているのではないでしょうか。
 

 
光熱費の高騰で「家の性能差」が一目でわかる時代に


前述の省エネ性能にも関連しますが、2025年も電気代・ガス代の高止まりが続いています。
こうした状況下で、住宅の断熱・設備性能の差が光熱費の差につながることが、感覚ではなく数値として表れ始めています。
高断熱・高気密住宅には、

  • 冷暖房効率が良く、室温が安定しやすい
  • 室温差が少なく快適性が高い
  • 光熱費が抑えられる

といった特徴があります。
 
実際に、阿部建設のオーナー様からは「賃貸に住んでいた時に比べて光熱費が大幅に削減できた」や、太陽光発電システムを搭載したお客様からは「自家消費による光熱費削減のメリットを実感している」とのお声もいただいています。
省エネ義務化の影響もあると思いますが、高断熱・高気密住宅のイニシャルコストは、光熱費などのランニングコストで回収できることが明確になったため、今後さらに住宅の高性能化は加速すると考えられます。
「性能の良い家は、住んでから毎月得をする」—そんな言葉が当たり前の時代がやってきます。
 

 
「金利上昇=建てない」ではなく「金利上昇=堅実な住宅計画」へ


2024年に始まった日銀の金融政策転換に伴う住宅ローン金利の上昇は、2025年に入って「特別なニュース」ではなく、住宅購入を考える上での前提として受け止められるようになりました。これは急激な情勢変化ではなく、将来を見据えて織り込むべき要素の一つとなりつつあります。
 
以前は、低金利という追い風もあり、「借りられる金額」を基準に住宅購入を進める方も少なくありませんでした。現在は「資金計画をより綿密に立てる」「無理な借入を避ける」に加え、「住宅会社選びは、コンセプトや提案力、施工力など総合的に判断する」といった、堅実な家づくりへと価値観がシフトしているように感じます。
 
金利の先行きは、日本経済の動向次第で変わる可能性があります。
「今は建て時ではない」「住宅購入自体を諦める」と単純に判断するのではなく、総支払額・将来の光熱費・修繕費まで含めたトータルコストを考慮しながら、信頼できる家づくりのパートナーを選ぶことで、安心感と満足度の高い家づくりは実現できます。
当社ではファイナンシャルプランナーと連携し、「借りられる金額」ではなく「無理なく返せる金額」を基準とした資金計画のもと、最適な家づくりをご提案しています。
まずはお気軽にご相談いただければと思います。
 

 

建設業界の淘汰が進んだことの「本当の意味」


建設業を営む会社の数は、実はコンビニの数より多いことをご存知でしょうか?
コンビニが約5万7,000店に対し、建設業はそのおよそ8倍の48万社にのぼります。建設会社の中には家族経営の会社や、大手の下請けとして仕事をしている会社もあり、看板を大々的に掲げていないこともあるので、意外に感じるかもしれません。
そんなコンビニよりも多い建設会社ですが、2025年の倒産件数は高い水準で推移しています。
 

(出典:帝国データバンクHP 「建設業」の倒産動向(2025年上半期)
 
私たちの周辺でも、県内外問わず「昔から懇意にしてきた住宅会社が倒産してしまった」という話を耳にする機会が増えました。
資金力の乏しい会社、人材が育たない会社、無理な受注を続けてきた会社…。
共通する課題は、受注減少と人材確保の停滞です。厳しい現実ですが、単純に「受注が少ない=市場で魅力的な仕事ができていない」ことを意味し、仕事が減れば売上も伸びず、事業の継続が難しくなります。
また、人材確保の停滞、すなわち社員採用が進まないことは、組織の固定化を招き、新しい取り組みやお客様ニーズへの対応を難しくします。
 
淘汰が進み「長く続く会社」「信頼を積み重ねてきた会社」が明らかになった今、住宅会社選びにおいて創業年数や社内体制、事業の継続性(後継者)などが、これまで以上に重要な判断材料となってきました。
阿部建設では、毎年の新入社員に加え、定期的に中途社員も採用し、「新しい風」を取り入れることが組織をより良くする上で重要な要素と捉えています。さらに、長い歴史に裏打ちされた組織力と、時流に即した設計・社内体制の整備により事業の継続性を高め、お客様に安心と信頼を提供できるよう、継続的に取り組んでいきます。

 

 
「間取りの正解」は一つではないことが、当たり前に


一年を通して強く感じたのは、お客様の価値観が「流行」から「自分たちの暮らし」へ、完全にシフトしたことです。
テレワーク、共働き、趣味、老後の生活…。
SNSで見る正解の間取りに振り回されるのではなく、「自分たちに合う家とは何か」を自身の言葉に置き換え、「自分はどうしたいか」をお話しいただくお客様が増えてきました。
これは住宅業界にとっても大きな前進です。
 
ハウスメーカーのセミオーダーでは対応しきれない『フルオーダー』の価値が改めて認識され、それを具現化する提案力・設計力・施工力が、これまで以上に求められています。こうした流れは当社にとって追い風であり、今後もその強化に努めていきます!
 


おわりに


お客様はもちろんのこと、現場を支えてくださる職人の皆さま、地域の皆さまのお力添えがあってこそ、今年一年を無事に終えることができました。
阿部建設に関わってくださったすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。
 
住宅業界は、大きな転換期の真っ只中にあります。
本当に良い家・良い住宅会社が選ばれる時代が、明確になった一年だったと思います。
住宅は人生で最も大きな買い物の一つです。だからこそ、お客様には価格だけでなく、「誰とつくるか」「どんな暮らしをしたいか」を大切にしていただきたいと思います。
一方で、住宅を提供する側として、流行や数字に振り回されることなく「暮らしをつくる」という原点に立ち返り、フルオーダーという考え方を通して、ご家族それぞれの「正解の住まい」を共に考える存在であり続けたいと思います。
 
来年も初心を忘れずに、派手さよりも堅実さを大切にしながら、お客様にとって価値ある住まいづくりに真摯に取り組んでまいります。

 
皆さまどうぞ、良いお年をお迎えください。

 
 

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