香川に建物や庭を見に行く機会があり、いくつか気になっていた場所をまわってきました。
実際に歩いてみると、素材の見せ方や動線の考え方など、細かなつくりがよく分かります。
そのとき感じたことを、自分なりにまとめたのでご紹介します。
① 時の納屋
大串半島の高台に建つ、建築家・堀部安嗣さん設計の建物です。
建物へ向かう小径が特徴的で、左右で石の大きさが異なり、歩くと質感の違いがよく分かりました。
周囲の風景を邪魔しない位置に控えめに建てられており、敷地のロケーションとのバランスがとても丁寧に扱われていました。


最近、業務で軒裏の防火構造について執拗に調べていたので、自然と軒裏に目がいきます(笑)。
こちらは準防火地域であるはずがないので木表しです。細い黒いラインは通気用のスリットでした。

建物の前は海に向かってひらけていて、軒下に入ると風が通り抜けて、とても気持ちよかったです。

② 栗林公園・掬月亭
高松市の中心部にありながら、園内に入ると外の気配が一気に途切れる庭園でした。
池と築山の配置が緻密で、歩くルートによって景色の見え方が大きく変わります。




掬月亭の内部は、開口部が大きく取られていて、どの方向からも水面がよく見えるつくりでした。
畳の間と縁側の高さが抑えられており、庭との距離が近く感じられます。

縁側の先には「ひもの樋」が使われていて、雨水を細かく落とすための素朴な仕組みでした。
建物の佇まいに対して主張が強すぎず、庭の景観にもよく馴染んでいました。

③ 金毘羅山・緑黛殿
香川県琴平町にある神域の山で、参道の入口から本宮まで石段が785段あるそうです。商店街を抜けてすぐに勾配が始まり、木立の中をひたすらのぼる道が続いていました。
段差や石の大きさが一定でない区間も多く、歩くリズムがその都度変わります。




緑黛殿は、建築家・鈴木了二さんの設計で、本宮の手前に位置しています。
地下に大きな内部空間があるのですが、当日は入ることができず、その空間を直接確認できなかったのが特に残念でした。
建物は広場に面して静かに建っており、山の斜面に対して水平に空間が取られています。
広場に入るガラスのスリットは人工スラブを三つに分ける形で通っていて、地下に光を落とすと同時にエキスパンションジョイントとしても機能しています。



図面ではSUSの型材をカットしつつ何重にも重なっています。

『ディテール163号2005年』

実際の空間を歩きながら細部のつくり方を確認することで、図面では見落としがちな点に気づくことが多く、あらためて設計に戻るうえで参考になる視察でした。
設計 中村