家づくりの中で、設計・契約と進めば次はいよいよ着工となります。しかし、工事中のことというのは、意外と把握しにくい部分ではないでしょうか?お施主さま自身が毎日現地に行くことは難しいですし、仕上がってしまえば分からないところもあります。基本的には、施工業者・工務店にお任せすることになりますので、不安に感じられる方も多いかもしれません。そこで今回は、工事担当者の視点から家づくりについてお話しします。
工事中、担当者として考えなければいけないことはいくつもあります。建物の品質管理、職人さんの安全管理、工程管理、近隣の方への配慮、納まりの検討、お客さまの求めている住まいをしっかりと形にすること・・などなど。どれも大切なことで、どれも欠かしてはいけないことです。阿部建設ではモデルハウスご来場後、“Briefing”を担当したスタッフが、設計から工事管理、引き渡しまで責任を持って携わります。最初から最後まで一貫してサポートができるので、お客さまとの信頼関係も築きやすく、お客さまの求めているもの・好みなどが把握しやすくなります。
例えば、工事を進めていく中で、どのようなディテールで納めるか迷う時があります。天井の廻り子(廻り縁)と間接照明のボックスが当たる部分、造作家具と建具枠が干渉する(ぶつかる)部分など、図面上で分からないところは現場での判断が必要になります。その際にも、「このお客さまはすっきりとした雰囲気が好みだから、線が少なくなるような納まりにしよう」など、細かな部分までそれぞれの好み・ご要望に合った施工をすることができます。家一棟、一から十まで全ての箇所について打ち合わせするのは、なかなか難しいことです。お客さまに「分かってくれている」と思っていただけるような施工を目指しています。
阿部建設では、素材やデザインはもちろんですが、温熱環境や耐震など性能面にも力を入れています。特に温熱環境は、住まう人の健康にも影響を及ぼします。阿部建設では標準性能として、HEAT20の定める基準「G2グレード」をクリアする外皮性能の住宅をつくっています。なお、お客様のご希望に合わせてさらに高性能な仕様にすることも可能です。そのためには、同時に気密性も考えなくてはいけません。
高気密住宅は、阿部建設でも数多く施工してきました。一言で高気密住宅と言っても、施工にはさまざまな方法があります。いずれも職人さんがしっかりとした施工をすることが重要で、それにより気密性能は大きく変わってきます。例えば、屋根や壁の気密は仕上がると見えなくなる下地部分で確保します。屋根の野地の隙間や、柱と梁の隙間、外壁面材とサッシの隙間など、わずかな隙間でも性能に影響が出るため、特に注意を払っている部分でもあります。
高気密住宅を施工する際には、工事中と完成時の2回気密測定(有料)を行います。完成時に行う気密測定は最終確認のようなもので、実は工事中に行う測定が一番大切です。上記に挙げた下地部分は、外壁・内壁が仕上がってしまうとやり直しがきかないため、工事中の測定数値がとても重要になります。高い施工精度が確保できるよう、工事中の確認・チェックを徹底し、お客さまに安心していただけるように努めています。
気密測定については、過去のブログ【住まいの性能を考える】でご紹介しています。
その①「家の隙間」はどのぐらい?
その② 気密性能ってどんなもの?
その③ 気密測定ってどうやるの?
その④ 気密住宅をつくるために
私が家づくりにおいて常に意識していることは、「誠実な仕事をする」ということです。特に工事中は突発的な出来事や、その場その場で判断を求められることがたくさんあります。これまでも、工事中に施工方法や対応に迷うことは何度もありました。そんな時も、流れに任せるのではなく、その都度立ち止まり多角的に検討・判断することが大切だと思っています。
家一棟を建てるのに、少なくとも20社50人以上の職人さんが関わります。阿部建設の家づくりに関わる職人さんは、指定業者として登録が必要です。人数はそれほど多くありませんが、長年家づくりに携わり、確かな腕と技術を持った方々ばかりです。
みなさんそれぞれプライドを持って仕事をしていますが、専門分野以外のことは分かりません。水道業者がこうした方がいいというやり方は電気業者から言わせればNGということは幾つもあります。工事担当者は両者の意見を加味しつつ、大工さんや他の関係する業者さんにも確認を取りながら、より良い方法を選択していきます。そういった場面においても「担当一貫性」の強みを感じています。お施主さまがどう思うか、お施主さまの意向に沿ったやり方なのか、これまでのやりとりを含めて検討・判断していくことで、工事がスムーズに進みお客さまの満足度も上がるのではないかと思います。
お施主さま、職人さん、スタッフ、3者は信頼関係で成り立っています。仕上がってしまえば見えなくなる部分もあるからこそ、この関係はとても重要だと感じています。最後まで妥協することなく「お施主さまにとって本当に良い家」を目指して、これからも家づくりに取り組んでいきたいと思います。
設計 八代