深い軒と薪ストーブのある家2024.04.17

こんにちは。設計の香取です。
今回は、2月にお引渡しを迎えたKさま邸のお話。ホームページやパンフレットではご紹介しきれない阿部建設の“性能”についても、詳しくご説明していきます!
 
のどかな住宅街に現れる、木とそとん壁を組み合わせた柔らかなファサード。「デザインと性能を両立した」半平屋が今回のお住まいです。
 

 
まずは気になる「半平屋」というキーワード。実はここ最近増えてきている人気のスタイルです。“1階の面積が大きく2階は小さめ”という形状で、平屋のように「1階で生活が完結できる」という点に加えて「平屋よりも費用が抑えられる」というメリットがあります。
 
外観からかなり大きな家のように見えますが、実は1階24.76坪、2階8.52坪、合計33.28坪と意外とコンパクト。SE構法を採用することで、1階に1.5mという深い軒をつくることができ、重厚感のある建物が実現しました。
 

 
この深い軒は玄関からリビングまで繋がっています。
雨に濡れない玄関の庇として、メインの駐車場のカーポートとして、LDKの日射遮蔽として…さまざまな役割をもちます。造園工事はこれから、軒下にはデッキや薪棚が設置され、さらに充実した空間になります。
 

 
SE構法とは?


SE構法は「高い耐震性能を確保しつつ、自由な空間デザインが可能」という特徴があります。在来工法の場合、耐震性能の確保に大量の壁や柱が必要になることもあり間取りの制限が出ますが、SE構法の場合は、高い耐震性能を確保しつつ柱や壁のない大空間を実現できます。こちらのお住まいのLDKは約22帖、柱のない「無柱空間+吹き抜け」を叶えることができました。
 

 
SE構法は在来工法と同様に許容応力度計算をしているので、地震への強さはもちろんですが、実は断熱性能の高さもメリットのひとつです。
在来工法は通常、柱や梁の厚さは105mm(在来工法でも120mm厚も可能)ですが、SE構法は120mm厚です。構造材が太くなることで、充填する断熱材も厚くなるため必然的に断熱性能も向上します。基礎も在来工法だと150mm厚のべた基礎になりますが、SE構法では170mm厚のべた基礎になるので、断熱性能と構造耐力の両面でより有利になります。
 

 
阿部建設は、SE構法登録施工店全国約600社の中から確かなデザイン力と施工技術が認められた「重量木骨プレミアムパートナー」として選抜されています。SE構法は誰でも建てられるわけではありません。気になった方はぜひお問い合わせください。
 

 
性能


それでは気になる性能について。
まずは数値から…
 
UA=0.36(HEAT20 G2.5)
ηAC=1.4
ηAC=1.3
C値=0.15

 
という高性能の結果になりました。阿部建設の建物は、UA=0.46以下(HEAT20 G2.0)を標準としています。C値も通常だと0.5前後が多いですが、今回は気密処理によって高い数値となりました。
 
●UA値などの詳細はこちら。 
 
そもそも「デザインと性能は両立できるの?」と思われる方も多いかもしれません。今や当たり前の耐震、断熱性能も、少し前までは、一方を重視することで一方を妥協しなければ成り立たない、というケースも多かったように思います。私たちの家づくりは「どちらも叶える」住まいであること。そうでなければ満足度の高い暮らしは生まれないと考えます。
 

 
それではデザインも大切にしながら、性能を向上したポイントについてご紹介します。
 
①建物のゾーニングと日射取得
今回の敷地は元々畑だったため、宅地でも整形地でもありませんでした。整形されていない敷地の場合、どこに基準を設けて建物を配置するかが難しいところ。一般的には“どこかの辺”と並行に建物を配置します。
 

 
しかし今回のお住まいは敷地のどこの辺にも合わせず、真南に対してメインのLDKや2階の居住空間がくるように配置しました。(敷地に対して斜めに配置)内部空間には光がたっぷり取り込まれる一方で、建物は道路に対して完全にそっぽを向くようなかたちになってしまいます。いわゆる“家の横腹”が見えているような状態で、外観のデザインとしてはいまひとつ。
 

 
そこで、建物の途中に角度をつけて玄関側が道路に対して正対するように設計しました。そしてこのゾーニングによって生まれたのが、動きのある建物の“斜めライン”と軒が繋がっていく印象的なファサードです。繊細で美しい縦格子もより引き立ちます。
 

 
西日対策と外観の美観上から、玄関側の窓は最小限に。反対にLDKは最大限日射取得ができるように、大きな窓を設けています。玄関側が道路と正対しているので、この大きな窓は道路側から見えないのもポイントです。
 

 
②サッシ
開口部は外壁と比べて断熱性能が弱くなるため、設置する箇所を絞っています。開口部の数は家全体で9箇所。そのうちLDKなどメインとなる空間の4箇所には、“トリプルガラスの木製サッシ”を採用しました。(玄関側の窓も板張りになじむよう木製サッシに!)木のぬくもりある空間によく馴染みます。
その他は、樹脂サッシのトリプルガラスを採用。気密性の良いFIX窓やすべり出し窓を多く取り入れることで、断熱性能への影響も最小限に抑えられます。
 

 
開口が必要な箇所はしっかり設けて、不要な箇所はきれいな壁を残すことで、スッキリと洗練されたデザインになりました。
 
ちなみに木製サッシってすごく高い印象がありませんか?実はFIX窓の木製サッシはそこまで高額ではないので、メインの空間にアクセントとして採用するのがおすすめです!
 

 
さて、木製サッシのエピソードがもう一つ。ダイニングのこちらの大きな窓です。
この敷地で一番視線が抜けて気持ちの良い場所がこの窓からの景色でした。視線の先には里山が広がり、建物を斜めに配置したことで生まれた庭には自然の山のような植栽が植えられる予定です。ソファーに座ったとき、ダイニングで食事をしている時、それぞれのシーンでこの景色が綺麗に切り取られるよう、木製サッシのFIX窓を採用しています。
 

 
しかしここで一点問題が…。この窓を設けたことで、真東からの夏の日射をガンガンに入れてしまうことに。温熱環境にこだわりのあるお施主さまだったので対策が必要でした。そこで、サッシの外側に日射遮蔽のための縦格子を設置。窓自体にも日射を反射するフィルムを施すことで解決しました。木格子は視線もカットもでき、意匠上のアクセントにもなっています。
 
●窓の設計手法についてはこちらでご紹介しています。 
 
③外壁の断熱
平屋に近い建物の場合、総2階に比べて屋根や外壁、基礎が多くなるので屋根と壁の断熱性能が建物の断熱性能に直結します。今回は断熱材を、標準で使用している発泡ウレタンからグラスウールに変更しています。
 

 
発泡ウレタンは隙間がないように吹き付けを行うため、気密性に優れた断熱材です。しかし吹付後に表面をカットするため、「外皮計算」という断熱性能の計算上は壁の厚さに対して数ミリ小さくした値で計算します。一方でグラスウールは、計算上も壁の厚さで計算できるので性能値を向上することができます。また、グラスウールは16K、24Kなど密度によって製品が異なり、選ぶ製品次第で性能向上を狙うことも可能です。数字が大きいほど密度が高く断熱性能も上がりますが、もちろん金額も高くなります。なので今回は16Kを採用。それでも吹き付け断熱に比べて性能を高くすることができました。(屋根はグラスウールとの比較検討をした結果、コスパと気密性に優れた発泡ウレタンの吹き付け断熱を採用しています)
 

 
断熱性能向上の主なポイントは上記の3つです。
これとあわせて、家全体は「ルームエアコン2台+薪ストーブ」で空調を行なっています。容量の大きい全館空調ではなく、エアコンで行う空調は“空気の流れ”を設計することで実現します。
 
1台目は主に床に吹き出す「暖房用」として。2台目は吹き抜けに面した2階のホールに設置し、1階の小屋裏を通じて居室や廊下にも空調が働くように計画しました。ルームエアコンにすることでランニングコストも抑えられます。
 

 
ただ、ここでまた1つ想定外のことが。
お引渡し後に何度かお邪魔した際に「薪ストーブだけしか使ってませんよ」というお言葉をいただきました。夜寝る前まで薪ストーブを使っていると、翌日の朝やその日の夕方まで、蓄熱された熱によって家全体が暖かいそうです。私自身もエアコンの不快な気流がない、とても心地の良い温熱環境を体感できました。イメージは低温のサウナ。遠赤外線のようにじんわりと暖かいので、足元と頭上で温度差がない均一な温度分布になっていると感じました。
 
そんな大活躍の薪ストーブは、LDKの一角4.5帖の土間スペースに設置されています。薪を置いたり、椅子を置いたりと結構スペースが必要になります。こちらはKさまからいただいた夜の様子。炎の揺らぎがとてもきれいですね。窓を少なくすることで生まれた漆喰の壁も、薪ストーブや照明がきれいに映るキャンバスになりました。
 

 
最後に、思い出の体験としてご家族皆さんで漆喰に手形をつけていただきました!お子様がとても楽しそうに手形を押している姿を見て、やって良かったなと思いました。
 

 
今回のお住まいは「温熱環境をよりいいものしたい」というご要望を軸に設計を進めました。
阿部建設はフルオーダーで、構造計算や外皮(温熱)計算をしながら一棟一棟丁寧に設計を行います。「デザインや意匠にこだわりたい」「家事動線や生活のしやすさが一番!」「費用を抑えたコスパのいい家にしたい」などお客様のご要望、価値観、こだわりポイントが違っても基本性能が高い設定になっているため、安心してご家族の“こだわり”を突き詰めて家づくりができます!
 
●そのほか、2つの屋根をもつ平屋の家など、「デザインと性能を両立した」お住まいは施工事例で多数ご紹介しています!

 

 
実際にモデルハウスや見学会にご来場いただいて、皆さんの“こだわり”をぜひお聞かせください。その思いを大切に家づくりをサポートさせていただきます!
 
 

設計 香取

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