業務企画室の阿部将也です。
これまでお伝えしてきた、シリーズ「住宅の耐震性能」。今回のテーマは「構造計算」です。
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●耐震基準は安全?
●耐震と制震と免震 前編 / 中編 / 後編
皆さんは建物を建てる際には、地震に耐えられるように【構造計算(試験や計算など、何かしらの根拠をもとに耐震性などが確保されている)】がされているのが当たり前だと考えられると思います。
身の回りにあるものもそうです。
私が今タイピングをしているキーボードも恐らくメーカーが耐久設計、試験を行っているでしょうし、横に置いているiPhoneも電卓もPCモニターも何かしらの耐久設計、試験を行ってクリアしたものが市場に出回っている、と私も何の疑問もなく思っています。
しかし、その耐久設計、試験は必ずしも統一されたものではない、ということを覚えておかなければいけません。
例えば、A社とB社がつくる携帯電話が全く同じ耐久設計や計算を行っているのか。もちろん、工業規格で決まっていることは同様だと思いますが、それ以外にメーカー独自の設計の考え方があり、試験方法は異なります。また、同様のものであっても、その設計や試験に“ギリギリ合格”なのか“余裕で合格”なのか…。一消費者にはわからない部分です。
前置きが長くなりましたが、住宅・建築物はどうでしょうか?
もちろん、日本には「建築基準法」という法律があります。それに則って必ず構造の検討を行わなければいけないわけですが、建築基準法とは“最低限の基準”を意味します。
そして、計算の仕方も複数あり、その【計算の仕方】が建築物にとって非常に重要になります。
「地震大国の日本だし基準が厳しいから、もちろんどの建物も構造計算を行っているんでしょ?」
多くの方はこう思われていると思います。(最近はご自身で勉強されて、質問される方もいらっしゃいますが…)それはやはり、前述の携帯電話の話と同じで、疑うことがない当たり前のものだと感じるからです。
しかし、日本で建築されている木造の平屋、2階建ての住宅のおよそ80%程度が構造計算をされずに建っています!これはどういうことなのでしょうか?
実は、建築基準法には「4号特例」と呼ばれるものが存在します。
“木造2階建て以下で500㎡(約151坪)の住宅”はこの特例に該当し、構造計算を行う義務がありません。ほとんどの住宅がこの範囲内に収まってしまうため、構造計算をわざわざ行わないことが住宅業界で一般的となっています。
ではなぜ、構造計算を行わないと判断する会社が多いのでしょうか?
次回は、「構造計算が行われない理由」と「構造計算の重要性」についてお話しします。
業務企画室 室長 阿部